過去四二万年の気温とCO2濃度

南極点に近い南緯七八・五度 、標高三四八八メートルのボストーク基地(ロシア)で、一九九八年に大規模なボーリングが行われました。深さ三六二〇メートルまで氷床を掘り、四二万年分に及ぶ氷の長い柱(氷床コア)が採取されています。
氷に閉じ込められた気体の分析結果に(私自身はよくわからない)補正をし、CO2濃度をはじき出す。氷をつくつている水分子の酸素原子を調べ、当時の気温を推定する(原理はわかりますが、ややこしいので説明は略)。結果をまとめ、四二万年にわたるCO2濃度と気温の変化を表すグラフが、一九九九年に発表されました。★「氷床コア ボストーク」で検索すれば、グラフを含むウィキペディア記事に出合えます。

グラフをじっくり眺めると、四回あった氷河期には気温もCO2濃度も低く、間氷期(現在が「第四間氷期」)には気温もCO2濃度も高い。気温とCO2濃度は、四二万年間ずっと歩調を合わせ、アップダウンを続けてきました。
それを見たアル・ゴア(ウソ4)は当然ながら、「CO2増加⇒気温上昇 の因果関係を語る動かぬ証拠」だと思ってしまいます。そこで二〇〇六年、映画『不都合な真実』の目玉商品に仕立て上げました。
ネットに見つかる動画でゴアは、先ほどのグラフを描いた巨大なパネルの脇に梯子をかけ、一段ずつ登りながらグラフの線を棒で指し、「CO2が起こす温暖化の脅威」を得意満面で解説します。映画では、それが見せ場のひとつでした。
けれど以後の解析で、因果関係は「気温上昇(むろん自然変動)増加」だと判明します。そのため一〇年後の映画『2』で彼は、本件にいっさい触れていません。
もっと重い事実があります。グラフの数値が正しいなら、間氷期の初期(四一万年前、三四万年前、二四万年前、二二万年前)は、CO2濃度が二七〇~三〇〇ppmだったのに、気温は現在より二~三℃も高かった。いまCO2濃度は(五割増しの)四二〇ppmだから(図1)、CO2が地球を暖めるなら、気温は過去の間氷期よりも高いはずのところ、むしろ低いのです。すると、CO2の「温暖化力」は想定外に弱い……のかもしれません。

要するに地球の気温(気候)は自然変動してきたし、これからも自然変動を続けます。地球史を振り返るかぎり、その歩みをCO2が決定的に左右するとは思えません。

気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)