ウソ6
人間がCO2を出すせいで、各地の氷河が縮小ないし後退中
【事実】縮小・後退中の氷河もあるが、CO2の排出とは時期的に一致しない。
かのアル・ゴア(前章)は、映画『不都合な真実』にも、宣伝用のビデオあれこれにも、氷河の端が海ヘドーンと崩れ落ちる動画を組み込みました。NHKも、温暖化(気候変動)番組の冒頭で、海外から仕入れたものでしょうけれど、必ずそんな動画を使います(ウソ1)。ああいうものを、いったい誰がいつ使い始めたのか、不思議で仕方ありません。地球温暖化とはおよそ関係のないシーンですから。
南極大陸をご想像ください。南極海の水が蒸発して雲になり、大陸に雪を降らせます。沿岸部に設営された昭和基地さえ年平均気温が氷点下一○℃なので、内陸に降った雪のほとんどは消えず、氷になっていく。その氷は、どこまでもたまるわけにはいかないため、自重に押されてゆっくりと端部へ向かう。だから南極やグリーランドの氷は、「氷の河」と呼ぶのです。
南極大陸の場合、中心部から動き始めた氷が端部に達するまでの平均時間はおよそ五〇〇〇年、という見積もりを見たことがあります。
端部までやってきた氷は、崩れ落ちるしかありません。だから氷の崩落は、はるかな昔からいつも起きてきた自然現象なのですね。
ゴアもNHKも、「CO2が地球を暖めるせいで、氷河が崩落しやすくなった」と庶民に思わせたいのでしょう。そして視聴者の大半は、あれを見て「わぁひどい。温暖化対策をしなくちゃ」と思うのでしょうか。崩落の勢いは、過去数十年や一○○年でどう変わってきたのかそれをきちんと言えるほど、氷河の観測史は長くありません。今後も地道な観測を続け、もし崩落が激しくなっているとわかったら、ゴアの信者もNHKも「温暖化のせい」にしたいのでしょうが、そうは問屋がおろさない。崩落の勢いが強まるのは、氷が増えた場合に限るのですから。
つまりあの崩落シーンは、食糧の生産を脅かす「地球寒冷化」や「氷河期接近」を大騒ぎした五〇~四○年前(ウソ7)にこそ使うべきものだったわけです。
原因が何であれ、今後もし温暖化が進むとすれば、氷河はどうなるのでしょう? 端部あたりの気温が○℃を超え、氷がじわじわ融けていくことになります。そのときむしろ崩落は起きにくくなり、よほど近寄らないかぎり確認できないでしょうが、氷は表面が融けてツルツルのはず。小学生でも知っていますね。
ただし南極は、前章でご紹介したとおり、過去およそ七○年の観測史上ずっと気温が横ばいか下がりぎみだから、特殊な場所(活発な海底火山がある南極半島)を除き、氷河のゆっくりとした営みは、ほとんど変わらなかったと思えます。
気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)