●東京ふしぎ発見

東京の気温データには、なんと逆のことが起きています。先ほど書いたとおり気象庁は、東京の昇温を「一〇〇年で約二・五℃」と評価しました。けれどGISSが気温サイトに載せているグラフは「一〇〇年で約二℃」と、むしろ昇温が弱いのです。
昇温度の小さい周辺地区に、東京を「引きずらせた」のでしょうか?
そんな補正(ないし小細工)が施された気温グラフあれこれを見るにつけ、「気温データは闇の中」としか言いようがありません。

●あべこべ世界

東京のように気温上昇が激しい(そしてGISSが上昇度を弱める)大都市は多くないため、GISSの気温サイトで目立つのは、実測の気温が横ばいか下がりぎみだった田舎のデータを「右肩上がり」に修正したグラフです(GISSの定義だと田舎は、人口一万未満の町村)。必要なときにサイトをのぞくだけの身に正確な「改変史」はつかめませんが、二〇〇〇年ごろと二〇一〇年ごろに、各地のグラフが激変したような気がします。
そのひとつ、テキサス州のオルバニーという村(人口二〇〇〇)の気温は、二〇〇〇年より前に見た際は、一〇〇年に約一℃のペースで下降中でした。けれど二〇〇五年ごろの再訪時はほぼ横ばいに変わり、いま訪れたらグラフそのものが消えています。
いちばん名高いのは、アメリカの地続き四八州にある観測点(約一二二〇か所)をまとめた気温グラフでしょう。一九九九年以前にNOAAのNCDC(国立気候データセンター。二〇一五年からNCEIに統合)が発表したグラフだと、気温が最高だったのは一九三〇~四〇年代で、以後は「下がりぎみの上下動」でした。けれどNCDCは二〇〇〇年ごろ突如 「一〇〇年に約一℃」の明確な昇温を示す姿に修正し、以後はそんなグラフを公開しています。


まったくのところ、途方に暮れるしかありません。
もうひとつ、二〇〇〇年の少し前、ニュージーランドの気象庁がNCDCに提出した気温データも有名です。ほんのかすかな(一〇〇年にせいぜい〇・一℃台の)昇温しかない実測データに補正を施し、「一〇〇年あたり約一℃昇温」のデータをNCDC(現NCEI)へ送っていました。それもIPCC『温暖化物語』の素材になったのでしょう。
そんな補正がなされる結果、NCEIやGISS、CRUが公表してIPCC報告書に載る気温グラフは、実測データより「右肩上がり度」が強まったものになるのです。でも、ちょっと考えてみてください。過去数十年、大都市ばかりか中都市や小都市も都市化を進め、それが気温を上げて現在に至るわけだから、補正するなら、現在に近いほど実測値を下げるべきですよ。つまり関係者が実際にやってきたのは、あべこべの操作なのです。
疑問だらけの気温グラフを生んだのは、美しい『温暖化物語』をつむぎたい関係者の、涙ぐましい努力だと思えます。彼らはなぜそんなことをしてきたのか?‥‥ウソ8と9の内容がひとつの答えになるでしょう。

『「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)