気温の値を変える要因
ある場所の気温は、どうやって測るのでしょう? 見た目はじつに単純そうでも、奥はなかなか深いのですよ。
昔は百葉箱に納めた水銀温度計で測りました。百葉箱は、日光が入らないよう屋根をつけたうえ外側を白く塗り、四方を風通しのいい「よろい戸」にしたもの。球部(感温部)の高さは地面から一・二五~二メートルが標準です(日本の気象庁は一・五メートルを採用)。
ただし一九七〇年ごろから、正式な測定で百葉箱はほとんど使いません。感温部も、水銀温度計から白金抵抗温度計に変わりました。金属(白金)の電気抵抗が高温ほど大きくなる性質を利用し、気温を測る道具です。それを金属の筒に納め、筒の内部で回るファンが、秒速三~五メートルの気流を生むようにしてあります。
気温は定点観測が命なので、観測点の場所はめったに動かしません(動かしたらどうなるか、あとで一例をご紹介)。温度計の周辺環境がずっとそのままなら、歳月とともに変わっていく気温の値は、地球の変化を表すでしょう。けれど人間社会は(自然界も)生き物なので、温度計を取り巻く環境もゆっくりと変わっていきます。
そばに生えている木が生長したり、近くに家やビルやビニールハウスができたりするかもしれません。そんな障害物が風通しを悪くすれば、晴れた日は熱がこもって(日だまり効果)、気温の読みを上げますね。人が出入りする建物なら電気を使うので熱源になり、やはり読みを上げる。反対に、木を伐採したり建物を壊したりして風通しがよくなっていくような場所なら、温度計の読みもじわじわ下がっていくでしょう。
事実、あちこちの気温データを眺めてみると、激しく上昇中の場所も、ほぼ横ばいの場所も、じわじわ下降中の場所も見つかります。そんなノイズまみれの気温値から「地球の変化」をつかむこと自体、無理な相談なのかもしれません。たぶんそこを反省したアメリカのNOAAが、USCRN事業を始めたのでした(前章)。
本書で注目する気温上昇には、都市化がかなり効くとわかっています。どれくらい効くのかを、次項で調べましょう。
『「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)