五限日本社会の正義  ― 「正しさ」は空気が作り出す 第一話 「タバコをすうな!」という空気的事実

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いまや日本では、「空気」こそが「正しさ」の権化であるかのようなことになっています。タバコを例に挙げましょう。
国民の敵―――ー ぃまやタバコはそんな感じになっています。
ヨーロッパ中世の魔女狩りと同じで、「タバコを吸っている人」を見かけたら、非難してもいいんだ、という「空気」が蔓延しています。タバコを吸う人は「悪」で、吸わない人は「善」というわけです。これが、いまの日本での(欧米もそうですが)「正しさ」になっています。 何せ健康神話のはびこる現代において、「タバコ 」を吸うと肺ガンになるという のですから、これは大変です。しかも、吸ったタバコ の煙(主流煙)と、火のついたタバコから立ち上る紫煙(副流煙)を比べると、有害物質の含有量は、主流煙より副流煙のほう が多いというのですから、タバコを吸わない人が目くじらを立てるのも、当然と言えば当然です。
でも、本当にタバコは「害」なのでしょうか。私はこのことに、ずっと疑問を抱いています。あるグラフをお見せしましょう。

かつて男性のほとんどが喫煙者という時代があって、下のグラフを見てもわかるとおり、1970年ぐらいまでは男性の8割ほどがタバコを吸っていました。当時は、タバコを吸わない男性は肩身の狭い思いをしたものです。そのうちに、「タバコを吸うと肺がんになる」と言われ始め、1966年をピーク (83.7%)に、喫煙者率はどんどん減少していきます。最近では、4割程度まで減っています。

でもこのグラフを見ると、何かおかしいですよね?
喫煙者率が減り続けているならば、肺がん死亡者数が減ってもいいはずなのに、1999年に胃がんを抜いて死亡要因のトップとなったように、肺がんは増え続け
ています。つまり「タバコを吸う人が減ったら肺がんが増えた」のです。厚労省は、タバコを吸っている人と吸わない人を比べると、喫煙者は1.6倍がんになりやすいと発表していますが、だったらこんなグラフになるでしょうか?
もうひとつ、データを挙げましょう。仮に、「タバコを吸うと肺がんになる」というならば、喫煙率が高い国の人たちは、肺がん率が高いはずです。
(WHO「タバコアトラス2002」)

世界の男性喫煙人口率トップ10はこうなっています。

① モンゴル(67.8%)
② 中国(66.9%)
③ 韓国(65.1%)
④ トルコ(60ー65%)
⑤ トンガ(62.4%)
⑥ アルバニア(60.0%)
⑦ インドネシア(59.0%)
⑧ スロバキア(55.1%)
⑨ フィリピン(53.8%)
⑩バングラデシュ(53.6%)

では男性の肺がん死亡率はどうでしょう?
トップ10は以下の通りです(世界地図『2006肺ガン死亡率トップ10』より http://www.mapsofworld.com)。

① ハンガリー
② オランダ
③ ルクセンブルク
④ ベルギー
⑤ クロアチア
⑥ イタリア
⑦ ポーランド
⑧ エストニア
⑨ ギリシャ
⑩ イギリス

どうです?喫煙人口と肺がん死亡率、まったく関係が見い出せないですよね?
つまり、喫煙と肺がんの間には科学的な因果関係がない、とこういうことになります。科学者の立場からすると、肺がんの原因には大気汚染など別の要因があるのではないか、と考えてしまいます。
もう一度、(170ページ)このグラフを見てください。
禁煙運動が盛んになり始めた80年代で考えてみます。グラフの82年頃の数字を見ると、喫煙者率は約70%です。男性の人口は約6000万人ですから 、喫煙者率70%ですと、喫煙者数は4200万人になります。喫煙者は20年後にがんになると言われていますが、2002年の肺がん死亡者数を見ると約4万人です。つまり、4200万人のうち、肺がんで亡くなったのは、1000人に1人以下ということです。
実際は4万人の中にタバコを吸わない人も混じっています。比率は1.6ですから、計算上、4万人のうち、喫煙者は約2万5000人、非喫煙者は約1万5000人になります。4200万人の喫煙者のうち、2万5000人が肺がんで亡くなったということになるので、実際は喫煙者の1万人肺がんで亡くなったのはたった6人 、ということになります。率にすると、わずか0.06%です。
仮に、喫煙者の1000人に1人が肺がんになったとしましょう。病院で診察を受けるのは、その1人です。この患者さんに限って言えば、「タバコを吸う=肺がんになる」という仮説が当てはまります。しかも、実際の患者は1人ではありません。約10年前には、喫煙者の肺がん患者が約4万人いました。
4万人が、医師にかかったということです。
医師からしてみれば、タバコを吸って肺がんになる人ばかりが来るのです。必然的に、「タバコを吸ってはダメですよ」ということになります。これは医師の良心です。
しかし私は、病院にやってきた1人ではなく、行かなかった999人のことを考えます。この999人は、タバコを吸っていたにもかかわらず、肺がんにもならず健康だった、ということです。さあそれでもあなたは、タバコを吸うとがんになる、と言い続けますか?
『「正しい」とは何か?』武田邦彦著 小学館より

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