経済界や、それまで原発を推進してきた政治家にとっては、原発を稼働し続けることが「正しい」とされています。そのいちばん大きな理由に挙げているのが、「原発をすべて止めてしまったら、日本経済がダメになってしまう」というものです。なにせ世間は長らく不況が続いていますから、「日本経済」を持ち出されると、「原発再稼働」の言い分のほうが正しいかな、と思ってしまいます。はたしてそうでしょうか?
日本の電気事情について、まずはおさらいしてみましょう。日本の電気はいったいどういうふうになっているかといいますと、約30% が原子力発電、それから、残りの60%ぐらいが石炭や天然ガスによる火力発電、残りが水力(約8%)と、太陽光発電などその他の発電(約1%)という構成でやってきました。これが、福島原発事故前までの日本の電気事情です。ではアメリカはどうでしょう?
原発の数で言うと、日本が54基(福島第一原発を含む)なのに対し、アメリカは104基です。ほぼ2倍ですね。一方、アメリカは約8億キロワットの電気を作っていますが、日本は1.8億キロワットです。つまり、全体の電力が日本の4倍強で、原子力発電所は2倍ですから、単純計算で、アメリカの総電力量に占める原発の割合は、約30%を占める日本の半分、つまり156%です。原発大国のアメリカに比べても、日本は原発依存度が高いということ、それなのにアメリカの電気料金は日本の半分であるということは、頭に入れておいてほしいと思います。
原発事故前の数字で比較すれば、原発稼働数では、日本はアメリカ、フランスに次ぐ、第3位でした。ちなみに、4位は28基のロシ ア、5位は20基の韓国、6位はインドとイギリスの19基です(2011年現在)。世界的に見ても、日本は原発大国というわけです。
では電気料金はどうでしょうか? 原発推進派にとっては、「原発は火力発電よりコストが安い=電気料金が安くなる」というのが、推進するひとつの根拠でした。アメリカと比べてわかったように、日本のほうがアメリカよりも原発の比率が高いのですから、その理屈で言えば、日本のほうがアメリカよりも電気料金が安くなければおかしい、ということになります。
『「正しい」とは何か?』武田邦彦著 小学館より