テレビを見ている数秒間に、リサイクルにこれほど多くのステップ、材料やエネルギー、そして人手がかかること、そして最後に残るものは回収された量の一部にしか過ぎないということを想像することはできません。
現実にはペットボトルをそのまま捨てたときのゴミの量を基準として一としますと、リサイクルをして出てくるゴミの量は四倍近くになります。ペットボトルをリサイクルするとよけいに環境を汚すという計算は著者だけではなく、廃棄物やリサイクルのお仕事を長くされている寄本先生、佐伯先生、そして槌田先生なども同様で、おおよそ三倍から一〇倍程度の数値が示されています。
一方、「リサイクルでゴミが減る」というような誤解を招くのはテレビなどのマスコミ側にも責任がありますが、ゴミを出す側の私たちやゴミを処理する自治体などの方にも多少の反省点があるような気がします。
ゴミを出す方は、ゴミとして出せばゴミ貯蔵所が満杯になるといわれるし、焼却もできない。かといって自分自身ではリサイクルできないので、仕方なくリサイクルの箱に入れます。そして「誰かがリサイクルしてくれるはずだ。まさかゴミにはならないだろう」と信じ込んでしまうのです。また、自治体などは「一般ゴミ」を減量したいと思っていますので、とにかく家庭からのゴミが減ることを第一としています。そこで、ともかくゴミの一部でもリサイクル工場に行けば、とりあえずゴミの量は減ります。そしてリサイクル工場の回収工程から捨てられるゴミは「産業廃棄物」となるので、一般廃棄物としては集計されません。見かけ上ゴミが減ったような計算になるのです。こんな一時しのぎを繰り返し、かえってゴミを増やしていては意味がないでしょう。しかし、わかりにくいことなので、ここでは項目別に整理します。
私たちがリサイクルの箱に入れてからリサイクル工場で最終段階に入るまでに、多くの人の手や材料やガソリンを使います。分別して袋に詰めるためには人の手と袋がいりますし、トラックで運搬するにはトラック、タイヤ、運転手、運転手が食べるお弁当の箱がいります。リサイクル工場でも建物、倉庫、電気、水道、暖房、ベルトコンベアーの材料、動力、作業員、パソコン、事務室の机、あげればキリがないほどのものが使われ、その間にガソリンや電気が消費されます。
リサイクルに使用するトラックのタイヤも、運転手の弁当箱もやがてゴミになります。フォークリフトのガソリン、ベルトコンベアーの動力はエネルギーとして消費されます。しかし、これらのものは見かけは「ペットボトル」ではありませんし、少なくともトラックのタイヤが使えなくなって捨ててもペットボトルの形をしていません。そのために、「ペットボトルをリサイクルしたら、ゴミの収集場所のペットボトルが少なくなった」ということになります。それは当たり前ですが、だからといって「ペットボトルをリサイクルしたらゴミが減った」ということとは全く違うことなのです。
リサイクルによってどのくらいゴミが増えるかは、リサイクルするものによって違いますが、ペットボトルを例にとると、リサイクルすることによって三倍以上ゴミが増えます。この計算は三種類の方法ですることができます。一つは分離工学を使って「混合物から目的のものを取りだすのに、社会全体にその何倍のものを流通させなければならないか」という視点から調べます。この計算には、
① もともとペットボトルがどのくらいあるか
② 回収されたペットボトルからどの程度の純度のボリエステルを取りだす必要があるか
③ 社会全体のペットポトルのうち 、何割を回収するか
を決める必要があります。
現在のペットボトルの販売量である三〇万トンが社会に出回っているとして、回収したポリエステルの純度が九九・九%、そして社会からの回収率を五〇%とすると、一本のペットボトルを回収するのに、その一八倍程度の流通が必要です。ここでいう「流通」の実態はトラックであったり、倉庫、ベルトコンベアーなどのことを指します。そしてそれらの損耗量や環境負荷の係数を考慮しますと、最低でも三・七倍程度の環境負荷になるという計算になります。
第二番目の計算は、石油からボリエステルを作り、ペレットにして成形し、ペットボトルを作り、それを阪売して小売りまで持って来る過程を調べて、ちょうど映画のフィルムを逆に回転させるようにして回収側の負荷を出す方法です。この方法の長所は、現実に現在、ペットボトルを阪売しているので実績があるということ、欠点は石油からペットボトルを作って販売するのと、使ったペットボトルを回収するのではそのやり方が違うということです。そこで、その差を補正して推定することになります。
第三番目の方法は「LCA」 (Life Cycle Assessment)と呼ばれる方法で、リサイクルの過程で起こることを一つ一つ積み上げていく方法です。この方法は「積み上げ」なので一見正確に出るように見えますが、実際には「何をどのように積み上げるか」「現実にやると問題点が起こらないか」など未知な部分が多く、計算に大きな任意性が入ってきます。つまり「鉛筆を舐(な)める 」といいますが、途中の計算過程を少し変えると随分違った数値が出てくること、それを計算した当人以外の他の人がわかりにくいことにあります。
しかし、だいたいのことをいえば、この一つの方法では同じような結論が出て、「理想的にペットボトルをリサイクルしても、最低三倍程度のゴミは出る」という計算になります。さらに、現実にはリサイクルされたペットボトルのうち、実際に再生されたもの以外のものは直接的にゴミになります。リサイクルにかかったエネルギーやリサイクルされたペットボトルに対してのゴミの量を計算するときは、最終的に再生されたもので「割り返す」ので、再生品あたりのゴミの発生量はさらに膨大になります。
目の前にあるペットボトルをリサイクルの箱に入れると、ゴミが増えますので、環境のためならリサイクルはやめるべきなのです。
『リサイクル汚染列島』(青春出版社)武田邦彦著より