ユダヤ人には祖国がない。ディアスポラ(祖国喪失)以来二千年、デラシネ(浮草)の民として生き抜いてきました。彼らユダヤ人の生存の意志・情動・知恵に、日本は厳しく学ばなければなりません。
飛行機が日本に近づくと大気の湿気が増す雲気に、日本に帰って来たという感動を覚えるのは筆者だけでしょうか。地球の海流の流線を描けば、日本列島の岸が最も激しく洗われていることが分かります。その次が欧州の西岸とアメリカの東海岸です。ニューヨーク・パリ・ロンドン・日本の都市群は、すべて海流の流線集中の賜物という側面 があります。
アメリカの西海岸は、流線が沖に向くので乾燥した気候になり、大西洋はグリーンランドから北極に抜けているので、流線の集中はゆるやかになります。太平洋は狭いベーリング海峡を頂点に三角形の姿をしていることから、日本列島の岸は流線集中が発生します。
ですから日本は高緯度の割に、温暖・多湿.暑い夏・四季といった自然となるのです。
イネという植物は亜熱帯のものです。世界の豪雪地帯の日本にイネが育つという信じ難い風景は、共に流線集中の賜物という一面があるのです。あくまで一面であり、品種改良の努力等々の人間の営みが大きいことはもちろんです。
海に囲まれた島国にイネを育てて、ほぼ単一の民族構成で二千年を生きてきた日本人は、民族的生存の意識に危機感をきわどくは刻まなかったようです。日本は、中国・朝鮮の歴史に比べても、どこか異質なのです。
中国五千年の歴史というのはウソです。四大文明のひとつの古代中国が、今日の中国と連なっているというのは誇大広告でしょう。民族移動の反復された激動は、民族の総入れ替えの歴史であり、今の中国人は孔子・孟子たちの子孫ではありません。彼ら原中国人は死に絶えるか、デイアスポラして中原を去っています。だいたい五胡十六国の頃(紀元の頃)か三国史の頃には、民族総入れ替わりの状態になっています。
易姓革命というのは、このような大陸の苛烈な歴史の産み出した国家思想です。民族の入れ替わりと国家統治の正統性を、天の命が革(あらた)まり天子の姓が易(かわ)ると説明するのが、民族移動・革命が常態の大陸の政治学なのです。
日本列島は大陸や半島の動乱の度に、追われた人々が逃げてくる蓬莱島(ほうらいしま)だったようです。
無数の渡来人伝承は、大陸・半島動乱の背面史であり、逃げ遅れたら殺されるから蓬莱島に逃げて来たのです。貧民の群というより、多くが前王朝を支えた人々でした。
中国人の生存の意思・情動・知恵と日本人のそれとの隔たりを解析して、思考の位相を弁(わきまえ)ておかねばなりません。中国人の顕教(たてまえ)は孔子・孟子の教えです。しかし、中国人の密教(ほんね)は、韓非子(カン ピシ)流の法家がそれだと知っておくべきです。
孔子・孟子の儒家を信奉すれば、中国人はそうした日本人を信用しません。政治や軍事は儒家には依拠しないのです。権謀術数は儒家のなすところではなく、修身齋家治国平天下(注2)の仁徳の政治を日本人は本気にしますが、中国の大人(たいじん)は顕教と言い捨てて動じません。
易姓革命を否定した国造りをした日本にあっては、だから天皇家には姓はありません。臣下の藤原氏はアマテラスの岩戸隠れの時の司会者アメノコヤネノミコトが先祖とされていて、予定調和的に「和」の国家論の神話を先祖は残しています。
『続日本人が知ってはならない歴史』若狭和朋著(2007年)
