『議定書』に謳われた計画が着々と実現しているかに思えるものも確かにある。だが、その計画がたとえ彼らの思惑通りに実現したとし ても、結果が裏切ることも大いにありうる。その端的な例がユダヤ人の永年の悲願だったイスラエル国家の在り方である。謀略を駆使し無理に無理を重ねてついに誕生したイスラエル国は海外ユダヤ人から送られてくる寄付と米国が提供する厖大な軍事援助がなければ存立できない破綻国家である。
しかも一部の宮裕なユダヤ人たちはイスラエルからの逃亡を始めているとも聞く。世界金融寡頭勢力に属するもっとも裕福なユダヤ人たちは資金援助はしたがイスラエル国に最初から寄りつきもしなかった。『議定書』に一貫する自信満々たる調子は、必ずしも現実に報われていないのである。
こうした点を考え合わせると、 そもそも『シオンの議定書』の内容はユダヤ人自身が意図的に漏洩したのではないかと疑わしくなってくる。つまり、一方で垂れ流しながら他方で偽書だと決めつけ、根拠のない言い掛かりだと騒ぎ立てるのだ。その目的は壮大な世界規模の陰謀であると見せかけることによって読む者を委縮させ抵抗力を無くすことにある。
こうして少数派の願望に過ぎない大風呂敷があたかも着々と達成されつつある世界規模の陰謀のように見えてくることになる。いかにもユダヤ人ならやりそうなことである。
ただ、一般のユダヤ人の多数は、『議定書』に列挙されているような世界征服の陰謀などとは何ら関わりをもっていないに違いない。『議定書』では「我々」と言って、あたかもユダヤ人全体の計画であるかのように装っているのだが、一般のユダヤ人はダシに使われているに過ぎない。
執拗に生き続けている長期的計画と、単なる大風呂敷に過ぎないもの。それを見極める眼力をも、本書を読む者には求められているのである。
[定本]『シオンの議定書』四王天延孝原訳 天童竺丸補訳・解説 成甲書房
昭和十六年(一九四一年)刊「猶太思想及運動」附録第三「シオンの議定書」を底本とした。
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