昔ギリシャの大學者ソクラテスはいろ/\國の為に盡し、又若 い人たちに正しい道を教ヘました。ところがソクラテスを憎む人々に訴へられて、とう/\死刑を言渡されました。弟子のクリトンは獄へ面會に行き、「罪もないのに死ななければならない道理はありません。今、獄を逃げ出す道があるから、すぐにお逃げなさい。」といつて、しきりにすめました。ソクラテスは「自分は今まで國のために正しい道をふんて來たから、今になってそれをやぶるこどは出来ない。國法にそむいて生きてゐるよりも、國法を守って死んだ方がよい」といつて、落ち着いてゐました。
『国民の修身』監修 渡辺昇一
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