男子も女子も人として國民として行ふべき道に違はありません。男子が世の繁榮をはからればならぬと同じ様に、女子もそれをはからればなりません。また女子が身もちを愼まればならぬと同じ様に、男子もそれを愼まねばなりません。
かやうに、人として國民としては違はありませんが、男子と女子とによって、それぞれ實際の務はおのづから別れて居ります。
男子と女子とは生まれながらにして身體も違ひ性質も違つてゐます。それで見ても、その務がおのづから違ふことは明らかであります。強いことは男子のもちまへで、やさしいことは女子のもちまへです。國・社會・家を安全に保護していくやうなことは男子の務で、家庭に和樂を輿へ、また子供を養育するやうなことは女子の務であります。
我等の父母が家庭で寅際に行ってゐる事は、すなはちこの男子の務と女子の務との主なものであります。父は一家の長として家族を率ゐ、家計を支へ、また外へ出ていろ/\な仕事をして働いてゐます。母は主婦として内にゐて父を助け、家をととのへ、我等の世話をてゐます。
男子と女子とがよく調和して各その務を全うしていけば、家も榮え國も榮えます。
『国民の修身』監修 渡辺昇一