男女ともに財には、六親の父親が配されている。それは、父親が四柱八字中にいるわけはなく、その人への父性の影響を示すのである。つまり、父親がいるとかいないの間題ではなく、父親の役目をする人が、成長期に家庭にいたかどうかを見る視点なのである。財に該当する干によって、父親の家庭における立場、おおよその性格まで推察することができる。財が陽干で天干にあれば父性の影響は大きく、四柱八字中に財がない場合は、父性の影響は何らかの理由で欠如したり、不足した家庭で育ったと推察できるのである。
最近、日本では父性の欠如ということが間題になっているようである。家庭における父親の地位が低下し、家庭という組織を構成する中心的役割を剥奪されてしまっていることに原因があると言われている。四柱推命において財に父親が配当されているのは、父親は家庭における権力の中心であって、あらゆる価値観を左右してこそ、家庭として正常に機能していると考えられたからであろう。
また、男性の場合、古来より財には妻・配偶者が配されている。「妻財」という言葉もあるように、男性が配偶者を得るということは、収入を得たり、社会活動を円滑に行なうという男性に求められる社会的役割の試金石という面があるからであろう。しかしながら、父親と配偶者を同じ財に配当することは、父親と妻には必ず共通性がなければならないという奇妙な問題を発生し、また実証的にも不適切なのである古書中では、日干と陰陽が同じである財(偏財とい )を父、陰陽が異なる財を妻(正財という)としているが、どのようにしてもこの不都合は解消されない。
結論的に言えば、財はあくまで父性の影響を示し、配偶者は後述のように日の蔵千に関連させて見なければならない。つまり、父親は通変の事象であるが、配偶者は通変の事象ではないのである。
ではなぜ男性の場合、財は配偶者である、という誤りが延々と引き継がれてきたのか。それは財が良好な働きをするなら、気配りが行き届き、積極的で交際範囲も広く、結果として配偶者・恋人を得ることにつながるからであろうと考えられる。また、財には欲望の対象という意味合いがある。自分の欲する物、それは異性のみではなく、金品のこともある。自分の欲するものを手に入れるために努力する気持ちを持つことに、財の働きが関与しているからであろう。
したがって、この財の働きは女性も男性と共通で、財が良好な作用を発揮するなら、女性の場合であっても、性格は明るく、積極的で、交際範囲も広く、おのずと配偶者・恋人を得る機会が多いことになるのである。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より