日干が剋す五行であることから、食傷と同様に、財による事象の共通性は、外向きに働く事象に関わることになる。
財という名称からわかるように、この通変は古来より金品に結びつけられて論議されてきた。確かに、金品に関わっている点はあるが、それはあくまで財の作用によって引き起こされる社会的活動の結呆であって、その人の四柱八字中に金品を備えているわけではない。
財の基本的な作用は、

「その人の外部環境を察知する能力、センサー、アンテナのようなもの」

と言える。そのセンサーが感知するのは、利害や経済動向であったり、人の気持ちであったり、その人の生活上必要なさまざまな情報であったりする。
あるいは自分自身が置かれた状況や立場を関知する能力に関わるのである。
したがって、サラリーマン・OLであって、財が良好な作用を発揮すれば、的確な仕事をして昇給の原因になり、結果として経済的に恵まれることにもなる。また、人の気持ちをよく察すれば、相手を楽しませたり、喜ばせたり、笑わせたりすることにつながり、そのことが収入に結びつくこともある。
また、目標を設定して、その目標に向けて努力をするという性状・行動面にも財の作用が関わることになる。例えば、どうしても欲しい、何とかして手に入れたいと思うものを手に入れるために、貯金をしたり、一生懸命働いたりして、目標の実現に向けて努力を重ねる原動力となるのである。
しかし、財の働きが良好ではないと、経済動向を見誤ったり、結果を求めすぎ、事の進め方が強引になって、人の反感を買ったりするようなことにもなり、度が過ぎると、欲しいものは手段を選ばず手に入れようとする、といった行動を起こすことにもつながることになる。あるいは、相手の気持ちを過度に尊重し、結果的にこびへつらったり、あるいは、内心では心よく思っていないにもかかわらず、表面的には相手に同調するそぶりを見せたり、という行動をとることになるのも、財の作用である。
また、財の作用が良好であれば、自身の目標を実現するためにとった行動・言動の方向性が的確で、結果的に目標を達成できることになり、さらに次の目標に向かって行動する意欲を伴うことになるが、財の作用が不良であるなら、思い通りに事が運ばないため、自信を失ったり、消極的になったり、行動することへの意欲を失ったり、人によく思われたいという気持ちが強くなり過ぎて、人の顔色をうかがい、自分自身の想いをあるがままに表現することができなくなるようなことにもなるのである。
オと財が、音も文字の形も似ているのは、財とともに食傷が良好な作用を発揮するなら、創作的な職業において多くの人々の支持を得て成功し、人から才能があると言われることになり、財を成すこともあるからである。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より