水は、腎臓に代表される泌尿器系と生殖器系の生理的作用に関連する。水の流動するという特性からして、血液・血圧にも関与し、「髪は血余」と言われるように、毛髪にも関わることになる。さらに、耳、聴覚、音感にも関わり、音楽関係の職業の適性を見る際には重要な視点となる場合も多い。
顔型は、「潤而厚(うるおい、しかして厚い)」といわれ、額が広く、えらが張った感じのする四角っぽい形となる。皮膚の色は黒に関わると言われている。
味覚は「鍼」、つまり塩辛さに関わるのであるが、実証的には、味付けの濃い食べ物との関わりを見ることができる。
最近では塩分を取り過ぎることが高血圧に悪影響をおよぼすということが常識となっているが、漢方の原典である『黄帝内経』が成立した2000年ほど前に、すでに中国人は経験的にそのことに気がついていたのである。
水には、五常の「智」が配されている。儒教でいう智の本来の意味は、「物事をよく知り、わきまえていること」であるが、智という文字から、知識・知恵といった言葉が連想されるため、五行の水は、頭の良し悪しを左右し ているという考えに陥りやすいので注意が必要である。一行のみでそのようなことは一切言えない。
智の根源的な思考様式に与える作用は「変化性」、あるいは変化に対する「適応能力」と言える。それは、流動し変化はしても、つねに水平を保ち、容器の形に即座になじむ水(water)の特性によって象徴される特質である。
水が強い人は一つのことにこだわることなく、次々と考えを変化させていくことができる。
このことに頭がよいと人に評価される要因があるとは言える。しかし、度を過ぎれば、気まぐれということもできるし、あまりにも水の要素が強いと、朝令暮改といった感じになって、人の信用を得ることが難しいことにもなるのである。
この水が良好な作用として働くなら、臨機応変といったことにもなる。流動的で変化が多い職業が向く要因ともなる。例えば、対人・接客業とか、テレビなどの生番組制作に関わるスタッフには、この水の資質が要求されることであろう。
水から水商売を連想することができるが、接客業の職業的特質から、変化が多いことになるため水の象意に含まれるのであって、水物を扱っているからではない。巷間の四柱推命に、水を水商売に直結させて、職業の適性を断定する安易なものがあるが、無視すべきである。ただし、酒に含まれるアルコールの薬理作用が水の象意に含まれるのは確かである。繰り返しになるが、職業の適性は、通変の四柱八字でのあり方を考慮することなく判断することはできないのである。

「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より