五行から知ることができる具体的事象は、 大きく次の2 点に分けることができる。
① 身体部位の状態(内臓諸器官、目・耳・鼻・舌・皮膚、容姿等々)
② 人格とか性格のおおもとをなす気質(感情性、論理性等々の思考様式)
①は、漢方と多くの点が共通する、五行の人体への配当である。②は、儒教で五常と言われていることに関連しており、人格とか性格を形成する―つの要素を見る視点となる。性格自体は通変で見るべき事象であり、五行では性格を見ることはできない、あくまで性格を形成する根底にある、思考様式を知るための視点となるのである。
五常とは、仁・義・礼・智・信と言われる五つの道徳的理念の総称で、人とし て守るべき五つの恒常不変の真理のことをいう。しかし、道徳的な理念は生まれて後、生活の中で獲得する行動様式の一部であるから、五常のそれぞれが意味するところの行動様式が生まれつき備わっていると考えるのは明らかな誤りであると言える。四柱八字を見て、「この方には生まれながらにして仁の心が備わっております」といった感じで、ちょっと考えれば気がつくであろう誤りを、数百年、あるいは千年におよぶかもしれない長い間にわたって、平然とおかし続けてきたのである。
五行はあくまで生まれた瞬間に天からうけた気であるから、親からの遺伝的な要因に関わる事象を示すものなのである。
以下、古来より五常として言われてきた道徳的理念を、ヒトの生物としての先天的機能として実証的見地から解釈し直し、説明していくことにする。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より