四季の変遷に伴って五行の旺が変遷するように、大運においても旺が変遷していく。その変遷のようすは月干支の旺と同じである。ただ違うのは、大運は1干支が10年間を統管する点と干支を逆に巡ることがあるという2点である。
例えば、大運に寅が巡って来ると、10年間、木が旺じることになる。これを木旺運と言う。
辰の場合、大運が順に巡るなら、前半4年は木旺、後半6年は土旺として作用し、逆に巡るなら、前半6年は土旺として作用し、後半4年は木旺として作用することになる。大運が逆に巡る場合は、大運の蔵干の連続性が保たれるように、土旺が先に巡り、後が木旺になるのである。また、大運干支が戊寅であれば、木旺運であり、大運干の戊土は、死令の戊土となる。つまり、大運干支が10年ごとに巡り、四柱八字に旺という変化を伴った、生剋・幇の作用を与えることになるのである。
また、この大運は四柱八字の月干支から起こすので、まったくその人の固有の干支の巡りである。流年の干支の巡りも生年の干支から順に巡っていくので、その人固有の干支の巡りと言えないことはないが、大運と流年が決定的に違うのは、流年の干支は地球上のすべての人と共有していることである。この違いはそのまま大運と流年の四柱八字への作用の意味合いの違いとなる。
つまり、大運の巡りは、その人自身の精神的・肉体的状態の変化を示すもので、個人的な変化の過程である。四柱八字と大運は、大運が示す10年間、一体になっているものと理解しなければならない。しかし、流年はすべての人に共通する干支の巡りであって、ヒトという生物全体の時間経過を示すものであるので、四柱八字と大運が一体となったものに、流年が関わり、具体的な事象が発現するという考え方をすることになる。
そして、四柱八字と大運に、流年がど のような生剋・幇の作用をもたらし、結果として、日干を中心として見た五行の調和にどのような結果をもたらすかを明らかにすることにより、その人にどのような具体的事象が発生するかを推察するのである。 四柱八字と大運と流年の関わりの見方は、後でさらに詳しく説明することにする。
なお、四柱推命に「運歳」という用語があるが、「運」とは大運のことで、「歳」とは流年のことを意味する。最後に、大連の変遷も考慮に入れた場合、命と言われるものは何通りあるかを示しておくことにする。計算式は次のようになる。それぞれの数字の根拠はすでに説明したことから理解できることなので、あえて解説はしないことにする。

((5×10)+(5×9))×(12+8)×((5×10)+(5×9))×(12+8)×2=3,610,000

大運が交替する年数の違いを10通りあるとして計算すると、さらに右の10倍になる。つまり、概略3610万ほどである。多いと言えば多いし、少ないと言えば少ないとも言える、何とも評価しがたい数値であるが、いずれにしろ、四柱推命の方法によれば、これらすべての命運をまったく別のものとして識別することができるのである。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より