五行は、もともとは四季の循環を記述するための符号であったが、時代を経るとともに、抽象化され、多くの意味・作用が仮託されるとともに、その関係は法則化され、相生、相剋という相互作用が付加された。つまり五行はそれぞれが孤立して存在するのではなく、ある条件のもとで、相生、相剋という相互作用を発生するのである。

●相生の作用
「相生」とは、それぞれの行に内在する「気」が転化することにより、相手の五行の力量を補い、助ける作用のことを言う。気とは、今の言葉にあえて置き換えて表現するなら、エネルギーのようなものと言える。
木は火を生じる。木が火を生じることにより火を強めることになる。同様に、火が土を生じることにより土を強め、土が金を生じることにより金を強め、金が水を生じることにより水を強め 、水はまた木を生じて木を強め、一巡する。そして、生じるほうは、その「気」を消耗する。
文章より図を見ていただいたほうが、直感的に理解できるであろう。

相生の図.jpg

相生の原則的な作用は、以上のようになるが、五行の力量的な関係により、次のような特殊な場合もあるとされている。四柱推命に関する文献を集成した『星平會海全書』に掲載されている「論五行生剋制化各有所喜所害」から、相生の特殊な関係について述べられているところを次に抜粋し、掲げることにする。
木多火熄/火多土焦/土多金埋/金多水濁/水多木漂
《木が多いと火は熄(や)む/火が多いと土は焦げる/土が多いと金は埋もれる/金が多いと水は濁る/水が多いと木は漂う》
右の「木多火熄」とは、木は火を生じる関係にあるが、木があまりにも強く、火があまりにも弱いなら、多過ぎる木は火を生じて強めるのではなく、逆に火を消してしまうと言われているのである。即物的なたとえで説明するなら、今にも消えそうなたき火に一気に多くのまき木をほうり込むと、火勢を強めるどころか、かえって火は消えてしまうということである。他の五行においても同様に考えていただきたい。ただ、これらの視点は、特殊な場合でしかないのであるが、実証的に有意であると言える。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より