30離為火

キーワード 火、まといつくもの

離。利貞。亨。畜牝牛吉。

(りはていによろし。とおる。ひんぎゅうをやしなえばきち。)

「離」は麗く、または離れること。「離為火の時、貞正であれば良い。通じる。牝牛のような柔順さを守って吉」。この卦は火と火が重なり、強烈な火を表して います。それは天の太陽であり、地の文明であり、人の輝ける知性や燃える情熱です。離為火の時は、才能を発揮するチャンスに恵まれますが、自分の付くべき 立場を見定め謙虚に従うべきです。そして外面を美しく飾るだけでなく、内面の充実を図るため、学問などに励むことです。強烈に火が燃え盛る危険な時、何事 も火を扱うように慎重に行ない、火が飛び移るような変わりやすい気持ちや短気を抑えて行動することです。

 

〔大意〕「離は、貞しきに利ろし。亨る。牝牛を畜えば吉なり」

(『易経』)離には「離れる」「別れる」「失う」「散る」「去る」といった意味がありますが、このほかに「付着する」といった意味にも使われる。「物に麗(つ)きて明かなる象」といった表現が見られます。

この「付着」から「火」の観念が出てくることは、すでに第三章でくわしく述べたところです。火というものは、それ自体で発生するものではない。何かがあって、それが燃えることで火となる。つまり、何かがなければ火は生まれようがない。

その代わり何かがあって燃え出せば、その物はあたかも火にまといつかれたごとく燃えさかる。ここからキーワードの「まといつくもの」が出てきます。また、火には極端な二面性がある。人類が人類たりえたのは、火を使用したからで、火は生活の上からの必要欠くべからざるものであるが、いったん使用を誤れば人間に大きな厄災をもたらす。

したがって、この卦の持つ意味もきわめて二面性のあるものになっています。まずは正しき火の使用がきわめて便利なように、正しき姿勢が幸運をも たらすということ、一方で極端な二面性から、離合集散がはげしい、争いが多い、親しい人との離別など、とくに男女関係の紛争などを賠示していると解釈されています。

しかし、マーフィー博士はこの卦を「火」そのものとしてとらえ、「すべてを明らかにし、すべてを可能にする至高の力」と見ます。それは潜在意識そのものといってもいいでしょう。使い方を誤らなければ、それはあなたにとって、これ以上はない強い味方である。逆に使い方を誤ればこんなに恐ろしい敵はありません。敵にしないためには、あなたが自然の法則に反した行ないをしないことです。なお、ここでいう牛は柔順さのことです。

 

 

 

●初9:志操堅固な者は守られる。

履錯然。敬之无咎。

(ふむことさくぜんたり。これをけいすればとがなし。)

「錯然」はまぎらわしいこと。「足もとがごたごたしている。慎重に事を行えば問題はない」。見通しが悪く足元に注意する時です。とに かく最初が肝腎ですから、丁寧に丁寧に行うことです。

 

●二6:真昼の太陽はどんなものにも影を落とさない。

黄離元吉。

(こうりげんきち。)

「黄」は中央の色。「離」は太陽のこと。「黄金の太陽が輝き、大いに吉」。まさに時を得てあなたの知性が冴えまくり、実力を発揮して 波に乗り、財運にも恵まれる時です。ただし慎重さをお忘れなく。

◎大変良い時です。

 

●三9:世間の誤った信念や意見を受け入れるな。

日昃之離。不鼓缶而歌。則大耋之嗟。凶。

(ひかたむくのり。ふをうちてうたわず。すなわちたいてつのなげきあり。きょう。)

「缶」は徳利。「大耋」は八十歳の老人のこと。「日が傾くように人生にも夕暮れの時が訪れる。宴会では徳利を叩くだけで皆と一緒に歌 おうとしない。老人が晩年を嘆く。凶」。見切りを付けるべき時です。自分だけのけ者にされないようにしましょう。

◎あなたの考え方、進み方に問題点があります。よく反省し、改めましょう。

 

●四9:あなたの力は自然が与えたものである。

突如其來如。焚如。死如。棄如。

(とつじょそれらいじょ。ふんじょしじょきじょ。)

「突然にやって来る。焼かれ、殺され、捨てられる」。危険がいっぱいで、思わぬ災難を被る時です。守りに徹しましょう。火事、色難に 要注意。

◎あなたの考え方、進み方に大きな欠陥があります、よく反省し、方針の転換をしましょう。

 

●五6:喜びは悲しみに席を空け渡し、涙はうれしさに道を譲る。

出涕沱若。戚嗟若。吉。

(なみだをいだしてだじゃく。いたみてさじゃく。きち。)

「沱若」は涙があふれ流れること。「嗟若」は悲しみ傷つくこと。「涙がとめどもなく流れ心が傷つき、憂い嘆く。今は危うい時であるこ とを知り、身を慎めば吉」。苦労の多い時ですが、謙虚にふるまえば通じます。目上の人の助力を乞うこと。

 

●上9:恨み、悪意、敵意は心に住むギャングである。

王用出征。有嘉折首。獲匪其醜、无咎。

(おうもちいいでてせいす。こうべをくじくをよみするあり。うることそのたぐいにあらず。とがなし。)

「醜」は衆、すなわち小人のこと。「王が出陣して征伐をする。敵の大将の首を取るが雑兵は逃してやる。問題はない」。社長自らが陣頭 指揮をとる時です。強気で当たるべき時ですが、目的達成のあかつきには寛大な処置をお忘れなく。

◎良い時です。

 

 

 

「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)及び以下を参照しています。

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