キーワード 軍隊
師。貞。丈人吉。无咎。(しはただし。じょうじんはきち。とがなし。)
「師」は師団の師、すなわち戦争のこと。「丈人」は器の大きな人のこと。
「地水師の時、貞正でなくてはならない。実力のある司令官に率いられるなら吉。問題はない」。地水師の時は、職場でも家庭でも争い事が多く苦労の絶えない 時です。この卦が出たら、集団の争い、戦争を意味するとともに、集団を動員するための大義名分と集団を率いるしっかりとした指導者が必要であることを表わ し ます。各爻では、戦争の時の指導者の対処法が場面に応じて解説されています。
〔大意〕師(し)は戦争、軍隊、兵をあらわす。『易経』には「師は、貞なり。丈人なれば吉にして咎なし」と書かれています。
これをもって人と争う、戦争をしてよいと解釈することはできません。マーフィー博士によれば、軍隊とは「あなたの心の中にあるいろいろな考えアイデア、意見、信念、心象をあらわしている」からです。
つまり軍隊とは、自分の心の中で訓練され、制御された外へ向かうエネルギーと解すことができます。あなたの心はあなた自身の指導者であり、また兵卒でもあります。兵よく働くためには、指導者がしっかりしていなくてはならないわけです。
真の指導者であるためには、つねに正しくなければなりません。大切なのは良いこと悪いことを選別する能力で、これができて最終的に選り分けられた事柄が潜在意識に送り込まれて、あなた自身の兵卒の資質となるのです。
一般的にこの卦は危険や困難をあらわしますが、それは消極的になれということではなく「正しければ吉」ということです。『易経』にある「丈人なれば吉」とある丈人とは長老のことで、良くでできた人に率られた軍隊なら、その戦いは正しく、勝利を得ることができるという意味です。
勇気をもって敢然と問題に立ち向かうことが大切だが、同時に熟慮し、困難や苦労にくじけてはならない。そのためには永遠の真理をはぐくみ、あなた自身の心の中の雑多な仲間をそこに導かなければなりません。問題の解決に失敗するのは、ほとんどの場合、自己に確信が持てないからで、ゆるぎない信念で事に当たれば、いかなる難間といえども勝利することができる。実際の行動の前にあなた自身の心の中で行なわれたことが勝敗のカギをにぎっているのです。
●初6:宇宙、自然の秩序にさからってはならない。
師出以律。否臧凶。(しいずるにりつをもってす。よきにあらざればきょう。)
「戦争の時は規律が第一である。規律が守られなければ凶」。あなたの生活態度、勤務態度が緩んでいるのではありませんか。出足が肝 腎。まず、規律を正すことです。
●二9:偉大なる存在に相談しなさい。あなたには大いなる知恵がさずけられる。
在師中吉。无咎。王三錫命。(しちゅうにありきち。とがなし。おうみたびめいをたまう。)
「有能な指令官が中心にいる。問題はない。王から三度も命令が下る」。この卦で唯一の陽で、有能な司令官であることを示します。信頼 と引き立てをバックに、大いに能力を発揮できる時です。
◎良い時です。
●三6:心の共同墓地をつくってはいけない。死人は死人にして葬らせよ。
師或輿尸。凶。(しあるいはしかばねをになう。きょう。)
「尸」は屍のこと。「戦争をして屍を車に載せて帰る。凶」。認識が甘く、実力も不足しているので、負け戦は見に見えています。病気や 大ケガにも用心しましょう。
◎あなたの考え方、進み方に問題点があります。よく反省し、改めましょう。
●四6:悪くなるまで待ってはならない。ただちに最善の策をはじめよ。
師左次。无咎。(しさじす。とがなし。)
「左次」とは退くこと。「前線から退く。問題はない」。退却も立派な戦の道です。今は一歩退いて静観すること。
●五6:恐怖、怒り、恨み、復讐心に心を支配させてはならない。
田有禽。利執言。无咎。長子師師。弟子輿屍。貞凶。(かりにきんあり。しつげんによろし。とがなし。ちょうししをひきう。ていししかばねをになう。ただしけれどもきょう。)
「禽」は賊。「長子」は能力のある人。「弟子」は能力のない小人のこと。「田を荒す賊がやって来た。命令を発したほうが良い。問題は ない。優れた人物はよく軍を率いる。小人に任せるなら、屍を担って敗走することになるので、貞正であっても凶」。妨害の多い時です。作戦としては優秀な参 謀を選んで一任することです。
●上6:誠実と正直と信念があなたを勝利に導く。
大君有命。開国承家。小人勿用。(たいくんめいあり。くにをひらきいえをうく。しょうじんもちうるなかれ。)
「大君は、戦争に勝って功労者を諸候に任じる。国を開いて家を興させる。小人は登用してはならない」。戦い済んで、論功行賞の時で す。功労があっても、責任ある立場につかせる人物は、良く選ぶことです。小人は小人にすぎません。
◎良い時です。
「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)及び以下を参照しています。