【キーワード 】受け入れるもの(女性原理、潜在意識)
坤元亨。利牝馬之貞。君子有攸往。先迷後得主。利西南得朋東北喪朋。安貞吉。
(こんはおおいにとおる。ひんばのていによろし。くんしゆくところあり。さきんずればまよいおくるればしゅをう。せいなんにともをえとうほくにともをうし なうによろし。ていにやすんずればきち。)
「坤為地の時、大いに通じる。牝馬のように貞正であれば良い。進む場合、先頭に立てば迷い、一歩遅れていけば主人を得る。西南方面(広々とした大地で陰の同類)に行けば友が得られ、東北方面(険しい山々で陽を意味する)に行けば同類の友は失うがそれで良い。貞正で心安らかにして吉」。坤為地は地と地が二つ重なった全陰の卦で す。母なる大地の、優しく地味な姿です。牝馬が牧場でのんびりと牧草をたべている情景です。あなたは先頭を きって進むことを好むかも知れません。しかし、坤為地の時は人の後ろからついて行き、人の意見に従い,裏方や女房役に徹した方が成功しやすい時なのです。「我れ先に」でなく「お先にどうぞ」の気持ちが求められる時です。
〔大意〕すべて陰からなる卦です。その意味するところは乾為天(けんいてん)と同じ「大いに望みがかなう」ですが、乾為天が男性的原理に支配され能動的なのに対し、こちらは女性的原理に支配されています。
潜在意識の属性は陰にあり、それは受け入れることによって、偉大なものを創造するという点で母性的創造に関わります。『易経』には、「坤は、元いに亨る。牝馬の貞に利ろし。…先んずれば迷い、後るれば主を得」とあり、従順であることが、成功や目的達成に重要であることを示しています。
ただ坤(こん)は潜在意識による創造ですから、この卦はきわめて無意識的な側面を持っています。願望や計画を持つことは大切だが、その実践に当たっては、信念と信頼をもって潜在意識に委ねることが肝心です。
「無限の知恵と無限の知力を持つ潜在意識に願望を引ぎ渡しなさい。そしてあなたの意識する心が静かに確信を持って、正しい考えを行なえばあらゆることはあなたの望む通りに実現する」のです。
善を考えれば善がそれにともない、悪を考えれば悪がそれにともなう――これが潜在意識の法則です。どんな事柄についても、誠実で正しい方向で思考し行動することです。目先の利益や憎悪の感情で事を行なうことは、あなたの目標達成を妨げるばかりか、かえってマイナスの結果を招きます。
健康、安定、平和の中で行なわれた成果こそが、真にあなたの幸福をもたらしてくれるのです。女性が妊娠し出産するプロセスで必要な状態と同じものが、人生の成功のためにも大切であるということです。
●初6:つとめて良いわざにはげむことを心がけよ。
履霜。堅氷至。 (しもをふみてけんぴょうにいたる。)
「薄い霜も思いもよらず厚い氷になる」。全陰の卦の最下位の時、陰気くさい、取るに足らない言動が、いつの間にか取り返しのつかない 厚い氷のようにならないよう充分注意しましょう。早期発見、早期治療がポイント。
●二6:そのなすところはみな栄える。
直方大。不習无不利。(ちょくほうだい。ならわずしてよろしからざるなし。)
「正直で品行方正で大きな徳の持ち主、これ以上教わるまでもない」。今後も坤為地の精神でまっすぐ素直に進みましょう。
◎良い時です。
●三6:偉大な者の導きに従え。
含章可貞。或従王事。无成有終。(しょうをふくむていにすべし。あるいはおうじにしたがえば、なすことなけれどもおわりあり。)
「章」とは知識、才能のこと。「王事」とは王命による日常の仕事のこと。「才能をひけらかさず貞正にしておくことだ。日常の仕事を真面目にやっていれば、目立つようなものでなくても終わりを全うすることができる」。いくら才能があっても、発揮するタイミングというものがあります。会社 ではルーチンワークに徹する時ですが、くさらず本分を全うすること。
●四6:何事も思い煩うな。すべてはよくなっていく。
括嚢。无咎无誉。(のうをくくる。とがもなくほまれもなし。)
「嚢」とは袋のこと。「袋の口をくくるように、発言に注意し、散財を控え、平々凡々と過ごすことだ」。慎みと用心が必要な時です。出 るクイは打たれます。
●五6:道は楽しく、みな平安である。
黄裳元吉。(こうしょうげんきち。)
「黄」とは天子の色、「裳」とは現在のスカートに当たり、従うということ。「坤為地の謙虚な姿で従い進めば大いに吉」。坤為地の精神を見事に実践している姿は、まるで温厚な天子のように光り輝いています。
●上6:否定的な考えとあらそうな。建設的な考えにとって代えよ。
龍戦干野。其血玄黄。(りゅうやにたたかう。そのちげんこう。)
「玄」とは天の色、「黄」とは地の色。「龍が野で戦いを挑んで血まみれになっている」。坤為地の精神を忘れ、上へ上へと突き進み、戦 い傷ついた姿です。
◎あなたの考え方、進み方に問題点があります。よく反省して、改めましょう。
「マーフィの易い」J.マーフィ(昭和61年、産能大学出版部)及び以下を参照しています。