もう一つ、もちろん、方位学を活用するということは、できるだけ凶方を避け、吉方のほうだけに行動を起こすことにあることは言うまでもありません。
しかし、ある場合には、たまたまどうしても凶方の方角に行動せざるをえないというようなことがあります。
たとえば、競馬ファンだったら、ぜったいに見のがせない大レースの―つである春の天皇賞は、天皇誕生日に、京都競馬場で行なわれることになっています。
天皇誕生日は、4月29日です。このように、日時と場所がきまってしまっている場合、たまたまその方角が本命殺とか暗剣殺のように悪い方角に当たっていたとしたら、どうしたらいいのでしょうか。このまま競馬場へ行き、いくら慎重に良い馬券を買おうと推理してみても、総はずれに近いさんざんな結呆となってしまうことは目に見えています。そうかといって、日時や競鳥場の場所を変えてもらうわけにもいかず、もちろん、この日のために自分の住みかを、良い方角のほうへ移すなどということは、とうていできる相談ではありません。
では、待ちに待ったこの日に 競馬場へ行くのはあきらめ、せいぜい良い方角にある場外馬券売場を探して、そこで馬券を買い、一人寂しくテレビの前に寝ころがっているしか仕方がないのでしょうか。
じつは、一つだけ抜け道があるのです。それは、「方位よけ」とか「方違え」とか呼ばれる方法です。「方違え」という言業は、古典の得意な人ならごぞんじでしょう。平安時代の貴族は、旅に出る場合、目的地の方角が悪いときには、わざわざ遠まわりをして、目的地へ向かう方角を変えるのがふつうでした。この方法を利用するのです。
たまの大レースですから、一時問ほど早く家を出たとしても、さして苦痛ではないでしょう。そして、たとえば、京都駅前など、その日競馬場との方位関係がいい場所の喫茶店でゆっくりお茶でも飲んだりなどして、一時間ぐらいの時間をすごしていただけばいいのです。はやる気持ちをおさえ、自分の推理に最後の検討をくわえ、しかも、凶方の影膀からのがれられる、まさに一石二鳥の方法というわけです。
この方法をとれば、いまの例のように、凶方に向かって行動していることからくる不幸や災難が最小限度に食いとめられるだけでなく、運機が好転してきたときには、そのチャンスをいち早くつかむこともできるのです。
さあ、これでもうこの本の使い方はすっかりマスターされたことでしょう。 あとはあなた自身でじっさいにやっていただくだけです。最後に一言申しそえれば、人の幸福というものは、たしかにそれぞれ生まれつき与えられた枠のようなものがあります。しかし、たとえば、40のものを与えられても、それをとことんまでつかみきれば、50のものを与えられて、それを半分しか活かせない人よりも、はるかに幸せだと言えるでしょう。私は、あなたが自分の与えられた幸福の枠を、とことんまで活かしていただくために、すこしでも役に立てばと思ってこの本を書きました。このことを頭に置いていただいたうえ、この本を敢大限に活用し、おおいに幸せをつかんでください。
◎出典 「改定方位学入門」高木彬光著 カッパブックス及びブログ作者の収集データーによる◎