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◎ 八割がフリーターの江戸時代 ◎『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より

◎ 八割がフリーターの江戸時代 ◎

現代……それは「お金まみれの幻想に浸かっている時代」と後世の歴史家は評価するだろう。もし「一万円と10万円のどちらでもあげる」と言われたら、「10万円」と答えることは、現代人にしてみれば考えるまでもない常識だろう。「明日、休んでもよいし、会社に出てきてもよい」と言われると休む方がよいに決まっていると思う。
でも、日本人が「働くより休む方が得」「お金をもらうなら多い方が得」という感覚を持つようになったのはそれほど前のことではない。少なくとも江戸時代には少数の商人を除いて「普通の人」は生活ができるだけのお金があればよく、仕事を何時に止めるかは本人が決めているのだから「終業のチャイム」は嗚らなかった。
いまでは「働く方が正しい」「勤勉は善」という幻想があるので、定職につかないフリーターはケシカラン!ということになるが、江戸時代は8割方がフリーターだった。江戸時代は「働くのは人生のためだから、働く時間はできるだけ少なくして、人生を楽しもう」という考え方であり、現代は「人生は働くためにあるのだから、際限なく働き、際限なくお金を儲けよう」という考え方が主流である。
お金を儲けようと思うと、それが目的化される。それが前述のアンベール言うところの「莫大な富を持っているくせに更に金儲けに夢中になっている大商人」であり、人々は「生活のできる範囲で働き、生活を楽しむためにのみ生きている」のである。だから終業のチャイムは嗚らず「満足できる程度に完成したとき」に仕事を止める。それなら仕事はイヤではない。
このような人生の考え方は中世ヨーロッパのゲルマン民族の社会と同じで、「生活に必要なだけのお金でよい」「働くことは大切なことだ」という考え方だった。むしろお金が多い方がよいというのはここ200年ほどでできてきた特殊な考え方なのである。

『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より R081007

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