◆ 第3章 「地震」を理解し、正しく恐れる ◆
「地震予知」は可能か
ここからは「災害大国・日本をどう防衛していくか」をテーマに、様々な視点から考察していきたいと思います。
「地震」に対する知識というのは、日本列島で生活していく上で非常に重要で必要なものです。
従来であれば、政府などが正しい情報を開示し、報道機関や学校で説明を行うべきことでしょう。そうしていれば、地震に対する理解が多くの国民により深まっていったはずですが、現状はそうなっておりません。
したがって本章では、自分自身や家族を守る上で必要な地震の知識を共有していきたいのです。
まずは、「地震予知」についてです。
1960年代に、長野県で松代(まつしろ)群発地震*15が起こりました。この地震は、長野県埴科郡松代町(現長野市) 付近で1965年8月3日から約5年半もの間続いた、世界的にも稀(まれ)な長期間にわたる群発地震で注目を浴びました。
実は、この地籐をきっかけに「地震を予知しなければならない」という考えが日本人の中に生まれたのです。
そして、「また関東大震災が来るのではないか」ということにも大きな関心が寄せられました。それは、東京大学地震研究所と地震学者を中心に関東大震災級の地震が1997年士3年の間で起きるという地震予知を出したからです。
束海地災も同じように非常に危険であるとして、膨大な予算を使って東海地区にひずみ計(どのくらいエネルギーが溜まっているかを計測)の観測網が張られました。静岡県の南部では、「明日にも地農が来る」と各家庭で枕元に防災用具や水などを用意し、そして会社や官庁では避難訓練が行われるという状態に陥りました。
しかし、その予測から四半世紀以上経過していますが、関東や東海地方で大地震は起きていません。それでもこの時期から、「日本では地震が予知できる」という錯覚が日本国民に植え付けられたのです。
次の図6のグラフはアメリカの地震研究者のロバート・ゲラー教授が、日本の地震を研究したものです。ゲラー教授は1年間に4000回程度、有感地震が起きる日本で地震の研究をしたいと東京大学で勉強して、その後に東
大教授になりました。私も同じ物理学者であり、破壊力学の専門家でもありましたので、ゲラー教授とは親しくさせていただきました。そして彼とは、「地震は予知できるのか」ということを議論し合いました。
※15 松代群発地震 長野県埴科郡松代町(現長野市)付近で1965年8月311から約5年半もの間続いた、世界的にも稀な長期間にわたる群発地震。震度5が9回、震度4が48回、その他合わせて総有感地震6万2826回にも及び、負傷者15名、10戸全壊などの被害を記録した。
「多様性」のまやかし グローバリズムの危険性と持続性喪失の原理 武田邦彦 啓文社書房 令和6年刊より
R080711

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