男子は生まれながら“特攻隊”

日本神話では、イザナギとイザナミの間に生まれた長女のアマテラスという女性神をトップにして、次のツクヨミは性別不詳ですが、三番目の子がスサノオという男性の神になります。
そのスサノオは男性ですから突撃力があり時代を変えていくことはできるのですが、時に暴れまわったりもして穏やかではない。そうするうちに スサノオノがヘマをしで かすと長女のアマテラスは、スサノオを斬って殺すなどということはしないで女性らしく、自分から天岩戸のなかに隠れてしまいます。
そうすると(アマテラスはなんといっても太陽神ですから)、太陽が隠れて辺り一帯が暗くなってウジが湧いてきたので、みんなが「アマテラス様、どうか出てきてくだ さい」と言って出てきてもらう、というような物語を古代の日本人はつくっています。
これは、男性は力があっていろいろとやることはできるけれども、それが行きすぎたら女性が諫めますよという話なのです。

そうやって女性を敬う一方で、天皇の跡継ぎには男性を選びました。当時の人は経験則として非常によく生物学を理解していたのでしょう。男親の遺伝子は男の子が継ぐのです。
他方、女の子に対しては親の気質が遺伝するよりも、子孫繁栄のために優秀な遺伝子を移すようにできています。女性の平均寿命が男性よりも長いのはそのためで、小さい頃に病気にかかるのも女児の子より男児のほうが多いのです。
男児に対しては母親と父親が自分たちの持っている悪い遺伝子、できればないほうがいいような遺伝子を移します。たとえば、劣性遺伝子と言われるものは男児に受け継がれるのですが、それにより男児が早世することを見越して、生まれてくる数も男の子のほうが女の子よりも3%ほど多くなっています。
つまり男性が兵隊として自分の命を犠牲にして日本を守るように、男性は遺伝子の世界においても自分の人生を犠牲にして、悪い遺伝子を持ったまま死んでいくことが集団に尽くすことになっているのです。
ある意味で男性は、生まれた時から“特攻隊”な のです。集団の遺伝子を正しく繋ぐために3%の男性は先に死んで、悪い遺伝子を持つ子供を残さないようになっています。そうしないと人間の遺伝子の系列は劣化していくのです。
しかし女性は子供を産み、育てていくことが大事ですから、親に似た遺伝子を引き継ぐことよりも、親の優秀な遺伝子を引き継ぐことでしっかりとした身体をつくるようになっているのです。

このように、「日本文化」は世界に類をみない寛容さを持ち、科学的な視点から見てもとても完成度が高いものです。
我々日本人は、「欧米文化」に追従する必要はありません。日本文化の本質を再認識し、実行すればいいのです。

『「新型コロナ」「EV脱炭素」「SDGs」の大ウソ』武田邦彦著 ビジネス社刊
20240507 P206