アラスカのグレイシャー湾
アラスカ州南東部のアラスカ湾内、ジュノー市から数十キロメートルの太平洋岸に、グレイシャー湾国立公園があります。緯度の北緯五八・七度は、だいたい樺太の北端あたり。呼び名(グレイシャー氷河)のとおり、氷河ウォッチングができる観光地だそうです。氷河の面積が歴史上どんなふうに変わってきたのか、わかりやすい説明をアメリカ国立公園局がホームページに載せていました。★
Glacier Bay’s Glacial History
一七五○~八○年ごろ、つまり小氷期のピーク時は、湾口までびっしり氷河が埋めていたとのこと(古記録によれば、小氷期がピークを迎える手前の一六六○年は、水辺に人が住む通常の湾)。小氷期が終わって地球が昇温モードに入った一八五○年ごろから(キリマンジャロの氷河と同じく)後退を始めていて、二〇世紀の中期になると、もはや湾内に氷河はありません。
つまりグレイシャー湾の場合、氷河の後退は、人間が出すCO2とはまったく関係のない時代にどんどん進んでいました。
世界各地の氷河あれこれも、気温の自然変動に従いつつ成長・後退を繰り返したようです。
たとえば古代ローマの全盛期は温暖だったと推定されています(ローマ温暖期。ウソ7)。紀元前二一八年には、現スペインのカルタヘナを出発したカルタゴのハンニバル軍が、象の「戦車」でアルプスを北から南へと越え、ローマの本土に侵攻しました。アルプスの氷河がいまの姿だったら、とてもそんなことはできません。
何度も書いたとおりCO2の大量排出は、第二次世界大戦後の一九五○年ごろ、ようやく始まりました。それとぴったり歩調を合わせてどこかの氷河が後退中‥‥という話は聞いたことがありません。
気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
