これだけはホント  大気にCO2が増え続けている
【補足】 そのおかげで地球の緑化と食糧の増産が進行中。なお、CO2を大気に増やす要因は、まだよくわかっていない。

地球観測室(掲載データ根拠)

第二次世界大戦が幕を引き、干支(えと)が一巡した一九五七年の七月から翌五八年の二月までを国際地球観測年として、いろいろな事業が繰り広げられました。高校の教科でいうと地学にからみ、宇宙線やオーロラから氷河・海洋・気象のことまで、地球の姿をまるごとつかもうとする国際研究プロジェクトです。それを機にソ連は史上初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げ(五七年一〇月)、負けるものかとアメリカも、三か月後の五八年一月にエクスプローラー1号を打ち上げました。
日本が南極に昭和基地を建設し、観測船『宗谷』で越冬隊を送ったのもそのころです。厚い氷に阻まれて接岸がままならず、一年後の一九五九年初めに再訪したら、樺太犬の「タロ」「ジロ」兄弟だけが生き延びていた‥‥という話をご存じの読者もいるでしょう。
「事業」のひとつが、大気の含むの測定でした。アメリカは、ハワイ島にあるマウナロア山の中腹を皮切りに、太平洋の島々と北極圏、南極など一二か所に測定サイトをつくります。地球の素顔をつかむ測定だから、余計なCO2が出ない場所や、人里離れた場所を選ぶわけです。日本は三〇年ほど遅れて一九八七年から岩手県の綾里(りょうり)、九三年から東京都の南鳥島、九七年から沖縄県の与那国島でCO2の測定を始めました。
ほかの国々も加わった結果、いま世界には一二〇以上(船舶のような移動体も含め三〇〇ほど)のCO2測定サイトがあります。測定結果の代表として、歴史がいちばん古いマウナロア中腹(標高三四〇〇メートル地点)のデータを図1にしました。
濃度曲線のギザギザにご注目ください。北半球に位置するハワイ島では、春先~夏に植物が勢いよく光合成(後述)をして大気からCO2を吸うため、その影響で濃度は少し下がる。
かたや晩秋から冬場の光合成活動は弱く、枯れた葉や木が(動物の死骸も)分解してCO2に戻る結果、濃度は上がるというわけで、大気のCO2濃度は、ぴったり一年の周期で八ppmほど増減し、それがギザギザをつくるのですね。
地球全体だと、植物が光合成で吸CO2は年々およそ四〇〇〇億トン(人間活動が出す量の一〇倍以上)にのぼり、それとほぼ同じ量が、生物の呼吸と腐敗を通じて大気に戻っていきます。なお、いまの大気が含むCO2の総量は約三兆トンです。
季節が北半球と逆の南半球では、逆パターンのギザギザができます。また、植物がほとんどない南極だとギザギザはできません(南極の測定サイトは昭和基地など五か所)。
そんなふうに場所ごとの特徴はあっても、ギザギザをならした線でみれば、全世界の一二〇か所以上で測定された 濃度に、差はほとんどありません。つまり図1は、過去六三年余りの「自然に近い環境」なら、地球上のどこでも同じ「CO2濃度の変化」だと思ってよろしい。地球の大気はいつも気流がよくかき混ぜているのですが、ローカルな大気の成分は光合成活動の影響を少し受けるわけですね。
気象庁は毎年の三月と一〇月に、それぞれ日本と世界の「CO2最高記録を更新!」と発表し、それを新聞やテレビが大げさに報じます。でも図1を眺めたとき、そんな発表をする気分になりますか? 何十年もまっすぐに増えてきたCO2なら、毎年の「記録更新」は小学生でも予想できますよ。発表に意味があるのは、減る気配が見えたときだけでしょう。気象庁がおかしな発表をする理由は、本書の後編でおわかりいただけると思います。
なお大気に増えるCO2の気温を上げてあぶない‥‥という風説を織りなすデータや情報のうち、確実なのは図1の数値だけ、とお考えください。おいおいご説明するとおり、ほかの情報あれこれは、世界の平均気温にしても自然災害にしても、あやしいものがたいへん多く、「でっち上げ」的なものも少なくありません。

『「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)