サイトアイコン ハウスワークサービス多摩店

イギリスの「正義」が引き起こしたアヘン戦争

「正しい」ことは、時間的に変わります。
さらに物事をややこしくしているのは、民族、人種によって、「正しさ」が異なるということです。地域によって考え方がまったく違うのです。
2001年に起きた、9.11もそうでした。ハイジャックされたジャンボジェット機が、アメリカの貿易センタービルに突っ込み、ビルは崩壊。4 000人以上の方が亡くなりました。
酷な言い方ですが、突っ込んだアラブのテロリストにも、言い分がありました。これは、彼らにとっての「正義」でした。これまで、アメリカやヨーロッパは、われわれアラブのイスラム教徒を蹂躙してきたじゃないか、と。いったい、何十万人の人間が犠牲になったと思っているのか、と。やられたのだから、やり返す。まさにヨーロッパ流の正義を、テロリストのやり口で遂行したのです。
確かに西欧諸国特にアメリカは、中東で戦争を繰り返しています。しかしこれとて、アメリカなりの「正義」に基づいてやっています。何も、イスラム教徒だからいい加減に扱った、ということではありません。もしアメリカに罪があるとしたら、正義に地域性がある、ということを理解していなかった、その一言に尽きると思うのです。
アメリカのかつての本国イギリスもまた、植民地時代に彼らの「正義」を押し通しました。
例えばインドでは、インドを発展させようとした人間たちの両手首を、切り落としました。
それは、「インドが発展することは、インドを支配するイギリスにとって好ましくない」という、おかしな理由からでした。イギリス一国の利益を考えれば、インドは遅れた国のまま、イギリスに従っていることが望ましかったのですね。これが当時のイギリスの「正しさ」でした。
この正義は、ある意味徹底していて、清(中国)との間に起きたアヘン戦争(1840年)もまた、イギリスの身勝手な「正義」が起こした戦争でした。イギリスは中国に進出すると、せっせと中国人にアヘンを勧めます。国が主導で麻薬を売りつけたのです。
中国にしたら、たまったものではありません。しかもその当時、本国イギリスでは、アヘンが禁止されていました。麻薬が問題であることは正確に理解していたのです。にもかかわらず、本国で禁止されたせいで行き場のなくなったアヘンを、大量に中国に持っていきました。
当然、中国側は抗議します。イギリス議会でも、「おかしい」という声があがりました。ところがすぐに、その声はかき消されます。イギリスの商人たちが、「アヘンをこのまま売らせろ!」と猛抗議したのです。自国の利益のために、植民地の知識人の両手首を切り落とした国です。自分たちの「良心」よりも、アヘン売却による自国ビジネスマンの利益を優先させるのは、当然です。「買いたくない」と言っているものを強引に買わせるために、イギリスが取った手段は戦争でした。世界最強の海軍を有していた近代国家のイギリスと、当時の清では、勝負になりません。この戦争での清の死者は約2000人とされます。一方のイギリス軍の死者はわずか10人だったと言われています。戦争というよりは、一方的な虐殺です。
自分が「正しい」と思ったことを、「正義」にしてしまう1 これが実は、アメリカやイギリスを貫いている「正しさ」の正体なのです。
『「正しい」とは何か?』武田邦彦著 小学館より

モバイルバージョンを終了