〇政治と道徳とは何の関係もない
群衆の心は常に物事の表面上しかわからない。そんな群衆を吸い込むような矛盾、不理屈の穴があいているところで、本当の理屈をこねたり主張を述べてみて、彼らを指導することがどうして出来ようか。人民は下層民であると否とにかかわらず、常にただただ浮薄な感情や迷信や風習や伝統や、感傷的理論に引きずられているから、党旅の軋礫のなかに巻き込まれるのである。その軋礫というのはいかに賢明な理論から出来上がっている調停案でも、すべてその妥協の可能性を破壊するのである。下層民の決議というのはすべて偶然か表向きの多数によるのだが、それは政治の秘密を知らないために不条理な決議をし、政府のなかに無政府の芽を持ち込んでいるのである。
政治は道徳とは何らの関係もない。道徳に基づいて政治をする人は練達の政治家ではない。したがって永く政権を保つことは出来ない。政治をしようとする人は欺睛と偽善とを用いなければならぬ。民間の大徳目であるところの正直と率直とは、政治においては不徳である。なぜならばこの徳目は強い政敵よりも一層確実、容易にその政府を倒してしまうからである。これらの道徳はゴイ国家の持ち前のものであって、我々は決してこれを模範としてはならぬ。我々の権利は力の中にある。権利という言葉は抽象的な概念であって何ら具体的なものでない。それはただ次のことを意味するだけだ。
僕は君より強いということを証明するために僕が欲しいものをよこせ。
権利は何に始まって、何に終わるか。薄弱な組織を持つ国家で法律があまり機能せず、政府が自由の権利を与えて権威を失った国には、新たな権利が発見できる。新しい権利があらゆる制度と秩序を壊し、法律を軽視し、あらゆる制度を変革して、今まで維持してきた権利を、自由意思で、我々ユダヤ人の利益のために放棄するのである。
[定本]『シオンの議定書』四王天延孝原訳 天童竺丸補訳・解説 成甲書房