イギリスのジェンナーはふとした事から、牛痘をうゑて疱瘡を豫防することを思ひつきました。友だちにそのはなしをすると友だちはみなあざけり笑って、「つきあひをやめる。」とまでいひました。それでも少しもかまはず、二十年あまりの間さま人ざまにくふうをこらし、とう/\種痘の法をはつめいしました。まづ自分の子に牛痘をうゑてみた上書物に書いてせけんの人に知らせました。ジェンナーはその後もいろ/\とわる口をいはれましたが、ます/\志を堅くしてけんきゆうをつゞけてゐました。そのうらに種痘が人だすけのよい法であると知れて、ひろくせけんにおこなはれるやうになりました。今では我等もそのおかげをかうむつて居るのでございます。
『国民の修身』監修 渡辺昇一
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