久留米絣を発明したのは井上でんという人です。でんは機織りが好きで、子どものうちに早くも一通り織れるようになりました。しかし生まれつき勝ち気でしたから、どうかして世間にない目新しい物を織り出そうと、常に工夫をこらしていました。
ある日でんは、着古した黒い地の仕事着があちこち白く擦れて模様かと思われるようになっているのに気がつきました。これは面白いと思って、ほぐして糸にしてみると、黒い糸が所々白くなっているので、黒と白の斑の糸で織れば、きっと面白い模様の織物が出来るに違いないと考えつきました。そこで試しに白糸を所々くくり、藍汁につけて斑に染め上げ、その糸を機にかけて、どんな織物が出来るかと胸を躍らせながら織ってみると、かすり模様があらわれて面白い織物が出来ました。それからいろいろと改良を加えて、後には非常に手の込んだ模様でも織れるようになりました。
久留米絣は、今日では誰でも知らない者がない位に広く用いられています。
(六年生)
※久留米絣:福岡県久留米市などで製造されている伝統工芸品。綿織物で、藍染めが主体。あらかじめ藍と白に染め分けた糸を用いて製織し、文様を表す
※井上でん:井上伝。天明八(一七八九)年~明治二(一八六九)
『国民の修身』監修 渡辺昇一