郷里を愛するのは人の情であります。我らが朝夕見慣れている山や川は、どこへ行っても忘れることが出来ません。我らは他日、市町村の公民となって、我が愛する郷里をいっそう楽しいよい所にしましょう。
どの市町村も市役所または町村役場を置き、学校を建て、道路を造り、橋を架けなどして、そこに住む人々の便益をはかっています。
かように公共の便益をはかるためには、たくさんの費用がいります。その費用は市町村民が分担するのが当然です。市町村税を納めるのはそのためです。税は進んで納むべきものであって、もし納税の期限に遅れると市町村の仕事の妨げになります。
市町村の規則を作ったり、予算を決めたり、教育・勧業・土木・衛生等の仕事をしたりするについて、いろいろ評議するために、市町村民は自分らの中から、市町村会議員を選挙します。市町村会議員はかように公共のことを決める大切な役でありますから、これを選挙する人はよく考えて、よい人を選び、また選ばれて議員となった人は、熱心に公共の幸福を増すことに努めなければなりません。
また市町村の代表者となって公共の事務を執り行う者は市町村長です。市長は市会で、町村長は町村会で選挙します。選ばれてこの地位につく人は、それを名誉と思って、忠実に市町村のために尽くす心掛けが大切であります。
我らは将来、公民となり、我が市町村のことは我がことと心得て、納税・選挙の務めをはたし、進んで産業を盛んにし、風俗をよくするなど、協同一致して公共のために尽くし、我が郷里を立派な市町村にしましょう。
(五年生)
『国民の修身』監修 渡辺昇一
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