金は、肺に代表される呼吸器系全般と消化器系に属する腸の生理的機能に関連する。具体的部位には、肺、咽喉、声帯、気管、小腸、大腸、また、骨、歯も含まれる。
古書を見ると「丙小腸」といい、小腸は火に属すると言われているものと、「庚是大腸」「庚是謄」「酉中精血小腸蔵」と、大腸、小腸、へそは金に属すると言われているものがある。実証的には後者が正しく、小腸と大腸は金に属し、大腸は水との関連もあると考えられる。
直腸についても、古書中に「主腸風痔漏。糞後下血」とあって、金に属するように言われてはいるが、医学的には水に属する生殖機能の自律神経が直腸と密接に関わっているので、金のみではなく、水との関連で考える必要がある。
金に属する肺と腸はまったく異なる身体部位ではあるが、肺の機能は、不要な二酸化炭素を排出し、酸素を体内に取り入れることにあり、腸の機能は、生命活動に重要な栄養素と水分の吸収と排泄をつかさどり、酸素と栄養素という違いはあっても、その生理的機能に共通性があることが、同じ金に属する理由と考えられる。
そのほか、腰も金に属することになり、腰痛とか椎間板ヘルニアのような疾患にも関連することになる。また金の作用が良好であれば、柔軟性があり、不良であれば、柔軟性がなく、腰痛のような疾患を招きやすい体質になることになる。
顔型は、「面方」と言われ、角張った顔型を呈する。皮膚の色は白となる。金があまりにも強い場合、ほお骨が高く、目元が窪み、よく言えば彫りの深い顔となるが、顔が長くなって、いわゆる馬面と言われる顔型になる。ほどほどの強さの金があり、木と関わると、色白で和服が似合いそうな、うりざね顔の日本的美人と言われる顔になる。
味覚は辛味をつかさどる。唐辛子のような辛さのみではなく、胡椒のような刺激物全般に共通する味覚に関わる。酒類の味は辛いと表現されることが多いが、度数の高 い酒類は刺激物として金に属すると考えるべきである。しかし、酒類には、エチルアルコールによる薬理作用があるので、水に属する要素も含んでいる。金には五常の「義」が配されている。義の本来の意味するところは、「人としての正しい道、道理にかなったこと」ということであるが、「正しい」とか「道理にかなった」ということは、社会情勢によって相対的に変化する要因があるし、そもそも人間に生来備わっている資質ではない。
古来より金の五常が「義」と言われていることの作用を実証的に評価するなら、「帰納的思考」に関与すると言える。これも実証的経験の末たどり着いた独自の考え方である。
帰納的思考とは、「多くの具体的な事柄から、一般的な法則を導き出すこと」であり、火の作用である演繹的思考に対峙する思考様式である。この作用は、多くの経験を積み重ねていく中から、社会的ルールを身につけていく過程に必要な能力に関与することにもなる。
「四柱推命学入門」小山内彰 (希林館)より