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【暖房に頼らない温室】八ヶ岳で冬の燃料代をほぼゼロにする温室 ― パッシブソーラー温室の概略設計と試算

【暖房に頼らない温室】八ヶ岳で冬の燃料代をほぼゼロにする温室 ― パッシブソーラー温室の概略設計と試算

暖房に頼らない温室
八ヶ岳で冬の燃料代をほぼゼロにする温室

― パッシブソーラー温室の概略設計と試算 ―
2026年11月6日|記録|暮らしと農
冬のビニールハウスを灯油で暖める燃料代は、施設園芸のいちばん重い費用の一つです。海外では、暖房器具を置かずに太陽の熱だけで冬を越す「パッシブソーラー温室」が広がっています。その仕組みを紹介した動画を手がかりに、日本、それも寒さの厳しい八ヶ岳で建てたらどうなるかを、電さん(Claude)と数字で確かめました。
考え方の基本は一つです。燃料を少しでも減らせれば、それが正解。ゼロにできなくても、全体のエネルギーが減れば前進です。
この記事の結論
・八ヶ岳南麓(アメダス大泉、標高867m)の1月の日照時間は平年205.7時間。日本海側の上越(62.4時間)の3倍以上で、太陽で温める温室に非常に向いています。
・床面積72㎡の普通のハウスを灯油で暖めると、冬(11〜3月)に葉物向け5℃管理で約800L(約11万円)、実のなる野菜向け10℃管理で約1,670L(約24万円)かかります。
・北側を断熱し、水4,000Lで熱を蓄え、夜は保温幕を下ろす温室なら、慎重に見ても燃料は3分の1以下になります。
・建設費の差は約80万円。10℃管理なら約4〜5年、5℃管理なら約7〜10年で、燃料代の差から取り戻せます。
・黒いホースの集熱器を足すと、10℃管理の灯油はさらに約3分の1減ります。

1.なぜ八ヶ岳なのか
パッシブソーラー温室に必要なのは、気温の高さではありません。冬に晴れる日が多いことです。日本では太平洋側と内陸の高地がこの条件を満たします。
冬の日照と寒さ(1991〜2020年の平年値)
大泉(山梨県北杜市) 1月の日照 205.7時間/2月 196.3時間/1月の最低気温 −5.0℃
高田(新潟県上越市) 1月の日照 62.4時間/2月 83.2時間/1月の最低気温 −0.4℃
大泉は寒いぶん暖房代がかさみますが、太陽は豊かです。温室の利点が数字にいちばんはっきり出る土地です。
2.どんな温室か(間口6m・長さ12m)

【図1:温室の断面図】
・東西に長い棟にして、長い面を真南に向けます。
・北壁・北屋根・東西の妻面は、断熱板50mmで塞ぎ、内側は白く塗ります。北から光は入らないので、塞いでも採光は減らず、夜に逃げる熱だけが減ります。
・南の採光面はフィルムの二重張り。下は急、上は緩い弓形にします。冬至の正午の太陽の高さは約31°で、光を真正面で受ける傾きは約59°。動画の「60°前後」と一致しますが、奥行6mでは棟が8m以上要るので、弓形が現実的です。
・夜の保温幕:布団のような断熱資材を、日没前に南面へ下ろし、朝に巻き上げます。
・蓄熱:黒く塗った200Lドラム缶20本(水4,000L)を北壁沿いに並べます。
・換気:電気の要らないワックス式の自動換気器で、暑すぎる昼は窓が開きます。
・基礎まわり:深さ60cmの断熱板を外周に埋め、地面を伝って逃げる熱を抑えます。

【図2:昼と夜の熱の流れ】
晴れた昼に水へ蓄えた熱を、保温幕で閉じ込めた夜に使います。燃料を使うのは、曇りの寒波が続く夜だけです。
3.燃料代はどれだけ減るか
大泉の平年の気象に、寒波や晴れ・曇りの日々のばらつきを入れた冬を30通り作り、1時間ごとに熱の出入りを計算しました。普通のハウスの熱の逃げやすさは、県の省エネの手引きの数字を使っています。
冬(11〜3月)の灯油(30通りの冬の平均)
夜5℃(葉物) 普通のハウス 795L(18L缶44本)→ パッシブ温室 計算約8L/慎重に見て265L
夜10℃(実のなる野菜) 普通のハウス 1,672L(93本)→ パッシブ温室 計算約138L/慎重に見て557L
「慎重に見て」は、計算が楽観的すぎる場合に備え、燃料を普通のハウスの3分の1と置いた値です。農研機構の研究で、布団状の資材と水蓄熱を組み合わせたハウスの暖房の負担が、普通の二重張りハウスの約3分の1になったことを根拠にしています。
灯油の全国平均の店頭価格は、2026年10月19日の調査で18L 2,573円(1Lあたり約143円)です。この価格には政府の補助(1Lあたり50.7円)が含まれ、補助がなくなれば約194円です。普通のハウスの冬の灯油代は、5℃管理で約11〜15万円、10℃管理で約24〜32万円になります。
4.建設費と、元が取れるまで
ハウス本体は業者に頼み、断熱壁やドラム缶、保温幕は自分たちで取り付ける想定の概算です。地域や業者で変わります。
建設費の概算
普通のハウス 本体・内張り・灯油の暖房機で 63〜96万円(中央 約80万円)
パッシブ温室 補強した本体、北側の断熱、保温幕、ドラム缶、自動換気器、予備のストーブで 129〜187万円(中央 約160万円)
差額 約80万円を取り戻す年数
夜5℃ 灯油143円:約7〜10年/194円:約5〜8年
夜10℃ 灯油143円:約3.6〜5年/194円:約2.6〜3.6年
高い温度を保ちたい作物ほど、燃料が高いほど、早く元が取れます。燃料の値上がりに振り回されにくくなること自体も、数字に表れない価値です。
5.黒いホースの集熱器を足す
黒いホースを太陽に当ててお湯を作る話も、別の動画で取り上げられていました。シャワーに使うと、すぐ冷める、風で熱が逃げる、細菌が霧になって肺に入る、といった弱点があります。けれども温室の蓄熱水を温める使い方なら、その多くが問題になりません。
・風:温室の南の地面に置き、透明な板で覆い、下に断熱板を敷く。
・少し温めて大量に回す:小さな直流ポンプを太陽光パネルに直結。日が照る時だけ回るので、電気代も制御も要りません。
・細菌:密閉した回路で水を温めるだけにして、霧にしない。
・凍結・水垢:ポンプが止まると水が温室内へ自然に戻るよう傾けて置く。水は雨水を使う。
集熱器の広さと灯油(夜10℃)
なし 約138L → 5㎡ 約111L → 10㎡ 約90L → 20㎡ 約60L
集熱器は温室の外に置くのが効果的です。温めた水を畝の下20〜30cmに埋めたホースに通せば、根のまわりを直接温められ、冬の葉物の伸びを助けます。
6.上手に使うために
・曇りの寒波:曇りが5日続くと、暖房なしでは夜に0℃を割ることがあります。小さな予備のストーブか、畝を覆う不織布のトンネルを用意しておきます。
・冬の主役は葉物:冬は日が短く、温度を保っても伸びはゆっくりです。秋のうちに育てておき、冬に少しずつ収穫する使い方が基本です。
・湿気:夜に閉め切ると湿度が上がるので、晴れた日の午前に換気します。
・資材の手入れ:フィルムの張り替え、鉄のドラム缶の錆に気を配ります。
・建てる前に:断熱壁を持つ温室は、普通のビニールハウスと違って建築物として扱われる場合があります。市町村に確かめてください。
7.動画の数字を確かめて
・中国の日光温室の面積を、動画は約80万haとしています。資料によって約14万haから280万ha超まで幅があり、確定できませんでした。
・ミネソタ大学の冬の温室の建設費を、動画は1平方フィート約25ドルとしています。大学の分析では平均約33ドルで、動画の数字は低めでした。
・日本にも実証があります。農研機構は中国の考え方を日本のパイプハウスに合わせた「日本型日光温室」で、暖房燃料の半減を実証しています。
・アーミッシュの温室の例など、元の記録を確かめられなかった話は、この記事の数字の根拠には使っていません。

出典
元の動画(パッシブソーラー温室):https://youtu.be/VSMInKFxoZU
元の動画(黒いホースの太陽熱温水器):https://youtu.be/L6i4sslSZo0
大泉の平年値(気象庁データの集計):weather.time-j.net 大泉
高田の平年値(気象庁データの集計):weather.time-j.net 高田
熱の逃げやすさの係数:長崎県 施設園芸の暖房燃料縮減対策
日本型日光温室:農研機構 パンフレット
布団資材と水蓄熱で暖房負荷3分の1:農研機構 成果情報
布団資材の灯油削減:宮城県 普及に移す技術
北海道の無加温ハウス周年生産:道総研 成績概要書
灯油価格と補助:灯油の店頭価格(資源エネルギー庁調査の集計)、補助額の解説
パイプハウスの建設費:滋賀県 パイプハウスの補強対策
ミネソタ大学の冬の温室:University of Minnesota Extension
中国の日光温室の面積:MDPI 2024、IJABE 2025
ビニールハウスの建築物の扱い:奈良県

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牧正人史先生が昭和三十三年に発見された姓名科学の体系を、デジタルの形で遺す仕事を続けています。
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