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◎ 三 遺伝子の乗り物と、男の悩み ◎『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より

三 遺伝子の乗り物と、男の悩み

 ところで、人間のオスはどうして性欲を失ったのだろうか。
 この疑問には、次の問いを立てるのがよい。
「なぜ、生物には性欲があるのだろうか」
 食欲は、自分の体を保つためにどうしても必要だ。睡眠もそうで、血液中に不純物がたまると、それをきれいにしなければならず、そのためにはまとまった休息が必要である。だから、食欲も睡眠の欲求もなくならない。
 でも、性欲がなくなっても何も困らない。自分が死んだ後の世界など、自分には知りようもないし、利害関係もない。むしろ性欲がなく、子どもなど持っていない方が、どんなに気楽で、かかるお金も少なくて済むことか。最近の日本では、子どもが親の面倒を見ないとこぼす人がいるが、キタキツネは子どもが大きくなると「子別れの儀式」をして子どもを追い払う。はじめから面倒を見てもらうことなど期待していないのだ。
 ドーキンスは、このことを「利己的な遺伝子」という言葉で表現した。遺伝子にしてみれば、わたしたちの肉体は単なる仮の宿にすぎない。つまり、体は「遺伝子の乗り物」だというのである。遺伝子は自分を残すために古い体を捨て、新しい体に移る。そのために「性欲」という幻想の欲望を作ったというのである。よくわかる話ではある。

 それでも、女性のことで悩んでいる男子学生は多い。
 一つのパターンは「付き合う女性がいない」というもので、これは強迫観念のようなものである。どうせ動物のオスは二十匹に一匹程度しかボスになれないのだから、一人で暮らすのは何でもないはずである。
 もう一つのパターンは「別れた」というケースである。この場合も、もう少し幻想から離れれば、「よかった。せいせいした。もともと女性が煩わしかった」ということに気づくものだが、なかなかそうはいかない。人間の幻想は底が深く、人は幻想の中でしか生きていけないからである。
 しかし、だからこそ、男性の悩みは「幻想」だと言えるのだ。

『武田邦彦の科学的人生論』飯塚書店刊より R081103

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#牧正人史 #マシレ予測 #武田邦彦 ♯yymm77

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