電話が壊れたので、電話をかけた――ウェブ受付でつまずいた話
NTT東日本の回線です。端末装置を動かしていたら、そのあとで有線電話が通じなくなりました。自分でやったことですから、文句を言う筋合いはありません。
ここから先が、今日書きたいことです。
音声案内が流れます。ウェブから申し込めば安く済むし簡単です、という趣旨の案内でした。ではそうしようと思い、案内に従ってショートメッセージでサイトのURLを送ってもらいました。
ここで一つ、立ち止まっておきます。
電話で申し込むより、ウェブのほうが安い。 ということは、裏から言えば、ウェブを使えない人のほうが高い金を払うということです。
そして、固定電話に頼っている人ほど高齢で、高齢の方ほどウェブに不慣れです。いちばん困っている人が、いちばん高い経路しか使えない。 そういう形になっています。
まず、故障受付のページを見つけることができませんでした。どこから入れば故障の申し込みになるのか、分からないのです。
そのうちに、アカウントを作れという画面になりました。仕方がない、それでは作るかと取り組みます。
すると、図のようなものが現れて、アカウントが二つに分かれるのです。それぞれにIDとパスワードを設定しなければならないらしい。
そんなものをいちいち覚えていられるか、と思いました。
短気なもので、そこで先へ進むのをやめました。明日、電話で修理を申し込むつもりです。
NTT東日本には「Web113」という故障受付の窓口があり、その中に「24時間かんたん受付」という入口が用意されていました。
そして、こう書かれています。お客さまIDが分からない場合でも、利用中の電話番号や契約時に登録した連絡先電話番号から回線を特定して、修理を申し込むことができる、と。
ただ、それでも申し上げたいことがあります。
電話が壊れて困っている人が、粘って探すでしょうか。
用意されているのに辿り着けない入口は、無いのと同じです。しかも、たどり着けなかった人の目の前に現れたのが、アカウントを二つ作れという画面でした。
私はパソコンに不慣れな人間ではありません。今こうしてお読みいただいているこのサイトも、自分で運営しています。ファイルを組み、目録を書き換え、サーバーへ上げています。IDとパスワードの類は、いくつも管理しています。
その人間が、故障の申し込みの画面で手を止めたのです。
では、慣れていない方はどうなるのでしょうか。
私が仕事で関わっている高齢のご利用者様の顔が浮かびます。あの方々に、アカウントを二つ作れと言って、作れるでしょうか。作れないから電話をかける。すると、電話のほうが高いのです。
私はかつて、この会社の下請けをしている会社と付き合いがありました。ですから、中の事情もいくらかは知っているつもりです。
あの会社の社員一人ひとりが不親切なわけではありません。故障受付の担当者は、電話口で丁寧に応対してくださいます。ウェブの画面を設計した人も、良かれと思って作ったはずです。
それでも、電話が壊れた人にウェブを勧める案内ができあがる。
なぜでしょうか。私はこう考えます。
けれど、画面の途中で投げ出した人が何人いたかは、誰も数えていません。数えられていないものは、改善の対象になりません。
あの会社は、かつて日本電信電話公社という名前でした。民営化してNTTになりましたが、公社であった時代は長い。
公社の仕事は、全国に設備を張り巡らせ、どこに住んでいる人にも同じ条件で電話を届けることでした。立派な仕事です。日本の通信網は、それで出来上がりました。
ただ、その時代には、使い勝手を競う必要がありませんでした。 他に選ぶ先がないからです。
下請けの側にいて感じたのは、お客様の姿が遠いということでした。仕様書が上から降りてきて、その通りに作る。作ったものを誰がどう使うかは、あまり話に出てきません。
これも、人柄の問題ではないと思います。そういう仕組みの中で長く仕事をすれば、誰でもそうなります。
電話番号を入れれば、それだけで申し込みが完了する入口を、いちばん目立つところに置いていただきたいのです。
「24時間かんたん受付」として、すでに用意されているものです。新しく作る必要はありません。音声案内で送られてくるURLを、その画面へ直接つなげるだけで足ります。
もう一つ。ウェブのほうが安いという料金の立て方も、考え直していただけないでしょうか。
ウェブを使える人は、もともと手間が少なくて済んでいます。そこをさらに安くして、使えない人から多く取る。それは、困っている度合いに応じて課金しているのと変わりません。
責めるつもりで書いたのではありません。私は今日、そちらの回線のおかげで仕事をしています。このサイトも、そちらの回線を通って皆さんのところへ届いています。
ただ、一人の利用者が今日ここでつまずいたということを、どこかに残しておきたかったのです。諦めた人は、数として残らないと知ってしまったからです。
技術としての有線電話は、たしかに終わりつつあります。銅線の電話網はすでにIP網へ切り替わりました。今日つながらなくなったのも、光回線の機器を動かしたからです。電話はもう、光の付属物になっています。
それでも、番号としての固定電話は残ります。会社の代表番号がそうです。取引先も役所も銀行も、固定番号を前提にしています。名刺から番号を消す日は、まだ来ていません。
そして、いちばん申し上げたいのはここです。
高齢の方にとって、あの黒い箱はまだ生きています。番号を押せばつながる。文字を打たなくていい。アカウントも要りません。壊れるまでは、いちばん簡単な機械なのです。
もっとも、十年後にこの記事を読み返せば、ずいぶん古い話に見えるかもしれません。それでよいのだと思っています。令和八年の秋には、こういうことがあった。 そういう記録として残ればと思います。
明日、電話で申し込みます。そちらがどうだったかは、また書き足します。

