◆ 「力と物の時代」からの脱却 ◆
世界は今、「力と物の時代」からの脱却が最終段階を迎えています。
その一つが、ニューヨークのオフィスビルの暴落です。
ニューヨーク・マンハッタンのミッドタウン地区にあるオフィスビルが、ネット競売サイトで850万ドル(約12億7000万円)という安値で落札されました。「ニューヨーク・タイムズ」によると、これは売り手が2006年に同物件を取得した金額に対して3%弱ということです。この「97%引き」は、米商業用不動産の苦境を象徴しています。
セキュリティや設備の面が整った新築オフィスビルは、高い入居率を維持できているものの、古いビルはテナントの流出が続いています。
アメリカからこういった状況が始まっているのは、国土の広さが関係しています。ワシントンからサンフランシスコまで飛行機でー 時間かかります。移動時間に関する感覚が他国とはまったく違うのです。
今後もニューヨークのオフィスビルの空室は増えていき、この現象は東京のオフィスビルにも波及してくると予想されます。
これは当然の動きと言えます。なぜなら、これからは「頭脳追放の時代」、つまり人間のアタマを少しずつAI(人工知能)に変えようという動きが始まっているからです。
予兆的な動きとして、前述した「人々の満足度(価値観)の変化」「 鉄鋼からシリコンへの転換」がありました 。そして現在、「 頸脳追放の時代」の先駆的な変化である「移動の縮小」が世界規模で起きています。「ニューヨークのオフィスビルの暴落」もその一端です。
コロナ禍で一気に広がった在宅勤務が定着してきており、それがオフィス需要の減少につながっています。ハードもソフトも整ってきて、多くの職種でリモートワークが可能になりました 。WEB会議も一気に普及しています 。
かつては満員電車に押し込まれて通勤し、職場内でしか頭脳を発揮して仕事をすることができなかったわけですが、現在では自宅でもカフェでも場所を選ばずに仕事ができるようになったのです。
また最近は、オフィスの中でも隣に座っている人に声をかけずに、LINEなどのアプリでやりとりをするということが普通になりました。
人間の頭脳から発せられる情報は、空間をできるだけ素早く移動すればいいのです。現在我々が使っているスマホは、第4世代の速度領域(4G) から5G ※40 の段階に入っています。5Gは全世界約80億人が一斉に情報発信できる領域です。
十数年前までは、携帯電話を持っていても田舎などに行くと電波が入らないということが度々ありました。私も出張で地方に行くと携帯電話が通じなくなるので、連絡事項などは事前に済ませておきました。そんな時代が、つい最近まであったのです。
今は日本中どこに行ってもほぼ通信可能で、通信速度も十分速くなりました。そして、いよいよ6G ※41 の時代がきます。6Gの時代になると、人間の移動がほとんど必要なくなるはずです。
※40 5G
第5世代移動通信システムの略称。高速大容量・低近延・同時多数接続の特性を持った最新の通信規格で、4Gに比べ各性能が10倍良くなるとされている。
※41 6G
第6世代移動通信システムの略称。現在使用されている最先端の技術である5Gを超えると考えられている将来の通信システム。現在の5Gではカバーできない宇宙や海などを含むあらゆる場所での使用が想定されている。
「多様性」のまやかし グローバリズムの危険性と持続性喪失の原理 武田邦彦 啓文社書房 令和6年刊より
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