連載:至誠の覚醒 第二十四話 昔、女性だったかもしれない

山から下りると、温泉に入った。どこの温泉だったか、もう覚えていない。湯につかり、酒を飲んだ。仲間たちと囲んだ卓袱台の上に、徳利が並んでいった。
気がゆるんでいたのだと思う。
ふと、口をついて出た。
「私は昔、女性だったかもしれない」
笑い声が上がった。私も笑った。しかしその言葉は、冗談から出たわけではなかった。なぜそう思ったのか、今も正確には説明できない。ただ、振られた記憶しかなかった。いつも、大事な時に、女性がいた。エポックのたびに、女性の影があった。それが妙に自然に感じられた。
日本人の心の底には、女性を崇める感覚が流れていると思う。神話の時代から、この国の中心には女神がいた。アマテラスは太陽であり、光であり、秩序だった。農耕の民は、大地を母と呼んだ。水も、山も、女性の名を持つことが多い。
私はその流れの中に、自分がいると感じることがある。
振られ続けたことも、いつも女性に導かれてきたことも、もしかしたら同じ根から来ているのかもしれない。崇めているから、近づけない。遠くから見ているから、エポックになる。
仲間たちはもう別の話をしていた。
私はぬるくなった酒を一口飲んで、窓の外を見た。山の稜線が、夜空に黒く浮かんでいた。

(つづく)R080402

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