◆亭主の出世は、女房の知恵と采配次第◆

戦前の日本には「家制度」がありました。1898(明治31) 年制定の民法で規定され、1947(昭和22) 年に廃止されました。家制度とは、家を単位として1つの戸籍をつくり、そこに所属する家族を戸主が統率する仕組みです。
家制度の下では、結婚するには戸主の同意が必要でした。戸主を引き継ぐことができるのは、原則的に長男です。
廃止されはしましたが、この家制度には合理的な部分も多々ありました。
一例として、「家」の中で妻は「おかみさん」と呼ばれ、実質的に全権を掌握していました。家の責任は戸主である男性が受け持ち、前述したように家の運営は女性に委ねられていました。家の内と外の仕事を妻と夫で分業するのはとても合理的です。
会社を想像してみればおわかりでしょう。
そして、「家のことは妻に任せて、遮二無―一に働く」というのが男の美徳でもありました。
現在の日本社会には、こうした面がたくさん残っています。「かかあ天下」や「亭主関白」という言葉も死語とは言えません。やや自嘲的ではあるにしても、家庭の平和を表す喜ばしい表現として今も盛んに使われます。
幕末に、三遊亭円朝が即興でつくったとされる「芝浜」という古典落語の名作があります。
大酒飲みだった魚屋の亭主が、女房の知恵と采配で立ち直って出世するーという話です。古典落語には、こうした妻が主導権を握ることで夫が成功する話がたくさんあります。
夫婦にはさまざまな形態があり、夫婦の個性はそれぞれに表れるものでしょう。ですが、日本は古来、「男は家族のために黙々と働き、女は男を上手に操って稼がせる」でやってきたのです。大枠では今もそれは変わりません。

『かけがえのない国 誇り高き日本文明』武田邦彦著 MdN出版(R05年)より R080325

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