ウソ6
海水面の上昇、サンゴの死滅など、海の異変が起きている
【事実】海水面は、CO2の大量排出と関係なく、一八五○年ごろからほぼ直線的に上昇中。海の生物に特別な変化はない。
旧約聖書の冒頭部、創世記第6~9章に、こんな話が出てきます。神はとうとう心を決めた。わしがつくった人間どもは、悪徳のかたまりだ。まっとうなノアの一族以外、大洪水で滅ぼしてやる。名高い「ノアの方舟」物語です。第19章でも神は、悪徳の町ソドムとゴモラを、火と硫黄(火山の噴火)で壊滅させてしまいます。
温暖化が異常気象や水害などを生むというのは、キリスト教信者の多い欧米発の物語でした。CO2の排出を悪徳、水害などを神の裁きに見立てれば、いまの話とそっくりです。
現世で起こる大洪水を「ヨハネ黙示録の世界」にたとえたアル・ゴアも、そんな感性の人なのでしょう。映画『不都合な真実』(前章)にも予告ビデオにも、神の怒りをほのめかす山火事、熱波、干ばつ、暴風雨、大水害などの動画やCGが満載でした。海面上昇のせいでフロリダ州の半分が水没する‥‥という当人の声も残ります。
温暖化話に火をつけたジェームズ・ハンセン(ウソ9)も二〇一五年、温暖化対策をしなければ、五○年後(二〇六五年)に海水面が三メートル上がると予言しました。
日本でも二〇一○年ごろ、海水面が○・五メートル上がったら東京はこれほど広い範囲が水没しますぞ‥‥とおごそかに語る専門家を、テレビで見たことがあります。彼が掲げたパネルの絵は、等高線つきの白地図さえあれば、小学生にも描けそうでしたが。
本章では、「神の裁き」で定番のひとつ、海の異変を考えます。皮切りに、ゴアやハンセンが不気味な予言をした海面上昇を眺めましょう。地球の温度が上がっていけば、海水が熱膨張して水面は上がる―――そこに異論はありません。
注目点は、CO2の排出と時期的にどう関連しつつ、海水面がどういうペースで上がってきたか‥‥なのですが、じつはそう単純な話でもありません。そこでまず、話をややこしくするポイントを押さえておきます。
気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
