北極の氷
北極圏の氷は、南極大陸の氷とはちがい、海に浮かんだ「海氷」です。かつて海氷面積は船員の目視や航空機観測で推定したところ、一九七○年代の末からは人工衛星で観測できるようになりました。その結果を日々、アメリカの国立雪氷データセンターNSIDCがホームページに公開しています。★
National Snow and Ice Data Center
衛星観測によると一九七九~二〇二一年の四三年間、北極の海氷面積はほぼ直線的に減り続け、一○年あたりの減少率は約二・五%です。ちなみにゴアの映画『2』の予告版では、同じはずの数値が一三・三%(!)にもなっていました。いま進行中の海氷減少は、人間活動から出るCO2が増えた時期にたまたま一致するため、「人為的温暖化」のせいに見えがちですが、相関は因果関係ではありません(科学の基本)。ここ数十年は、北極海(と北大西洋)の表層水温が自然変動で上昇中だから、海氷も減っているようなのです。
海の表層水温がほぼ一定の周期で変動することは、二〇世紀の末ごろにわかりました(そのため、当時までの温暖化本には記載なし)。北大西洋の場合、周期は六○~八○年に見えるのでAMO(Atlantic Multidecadal Oscillation:大西洋数十年規模振動)と呼ばれ、過去一七○年間ほどの動向をまとめると、次のようになります(『狂騒曲』2章)。★
一八八○年ごろ~一九一○年ごろ 水温の下降期
一九一○年ごろ~一九五○年ごろ 水温の上昇期
一九五○年ごろ~一九八○年ごろ 水温の下降期
一九八○年ごろ~現在 水温の上昇期
つまり、(大気温も含む)衛星観測が始まった一九七九年はたまたま水温上昇のスタート時点に当たるため、そのせいで北極海の氷がじわじわ融けている―――と考えるほうが素直なわけですね。なお、海氷が融けても水位はほとんど変わらないので(アルキメデスの原理)、それが地球の海水面(ウソ6)を上げる心配はありません。
水温がゆっくり上下動すれば、それにつれて気温も上下動するでしょう。実際、グリーンランド各地の気温がどう変わってきたかをGISSの気温サイトで眺めれば、表層水温の動向とよく似ているのがわかります。★
「気候変動・脱炭素」14のウソ』渡辺正著(丸善出版株式会社)
